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2013 年度 実施状況報告書

古代日本語述語形式における語彙と文法の交渉に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24520512
研究機関早稲田大学

研究代表者

仁科 明  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (70326122)

キーワード日本語史 / 日本語文法
研究概要

今年度前半期には、昨年度来行ってきた調査を踏まえ、さらに「つ」「ぬ」の用法の検討をすすめ、話手の判断を表している側面(山田文法で言う「統覚の運用を助くる」複語尾に位置づけられそうな面)と、動詞語彙の転換を行う側面(同じく山田文法で言う「属性の作用を助くる」複語尾に通ずる面)の両面を、以前の論文で「たり(り)」や「(ら)る」の理解について示唆してあった方向(動詞の派生語尾から転換したものとして理解する)に従って理解する可能性を追求した。このような方向の検討によって、代表者の「(ら)る」(「(ら)ゆ」)に関する理解をより大きな文脈に位置づけることが可能になり、代表者の議論に対してなされた批判に答えることが出来ると考えてのことでもあった。
さて一方、「つ」「ぬ」を考える際の大問題として、その振る舞いの特殊性がある。野村剛史「源氏物語のテンス・アスペクト」(『講座源氏物語研究8源氏物語のことばと表現』おうふう, 2007)や鈴木泰『古代日本語時間表現の形態論的研究』(ひつじ書房, 2009)が指摘するように、「つ」「ぬ」が使われそうな環境で、現れず、基本形があらわれることがあるのである。この問題を考える過程で、運動動詞の基本形(終止・連体形)による終止について再考する必要が生じた。そこで、今年度後半期は基本形終止の問題に重点を移して検討を行った。
「つ」「ぬ」の意味の広がりの記述、基本形終止の問題、いずれについても、いくつか検討すべき問題が残ったため、今年度中の活字化には至らなかったが、基本形終止の問題については、日本語文法学会第14回大会シムポジウム「動詞基本形を考える」(2013年11月30日)での口頭発表に結実した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は、研究代表者の「(ら)る」(「(ら)ゆ」)の議論に対してなされた批判に対する応答を検討していたこともあり、本来のテーマの追求に関しては出遅れていたが、今年度は、その問題をより大きな文脈に位置づけることによって、代表者自身のこれまでの研究や、本研究の本来的なテーマと関連づける糸口を見出した。
残念ながら、いまだ活字化には至っていないため、目標を完全に達成したとは言いがたい状況だが、研究のまとめとして位置づけている来年度に向けて、ある程度の見通しは得られたと考えている。

今後の研究の推進方策

今年度、検討してきた個別形式の課題(基本形の問題、「つ」「ぬ」の問題)については、いくつか積み残した問題があり、活字化に至らなかった。そうした問題について、調査と検討を行い、課題の細部を詰めていきたい。
一方、より大きな問題(「つ」「ぬ」などを述語体系にどう位置づけるかという問題)については、問題を検討する中で、話手の判断を表している側面(山田文法で言う「統覚の運用を助くる」複語尾に位置づけられそうな面)と、動詞語彙の転換を行う側面(同じく山田文法で言う「属性の作用を助くる」複語尾に通ずる面)の両面を持った述語形式にも、いくつかの類型が考えられることが明確になってきた。それを踏まえて、二面性を持った述語形式全般に対して位置づけを与えるような作業を行っていく予定である。
とくに後者の問題は、本研究全体のテーマ(語彙的なものと文法的なものの関わりを考える)と密接に関係した問題であり、また、代表者の考える述語体系の議論の重要な一角ともなるものである。この問題に対しては、きちんとした見通しを立て、今年度中に活字化を行い、本研究のまとめとしたい。

次年度の研究費の使用計画

個人的な事情で、旅費の消化が進まなかったことが主な理由である。
今年度は、今年度までと同様の調査・検討の一方で、成果の公表も積極的に行う予定であり、予定通りの予算消化を進める。資料・研究書の購入、旅費、印刷費なども消化していく見込みである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 万葉集運動動詞の終止形・連体形終止、再考

    • 著者名/発表者名
      仁科明
    • 学会等名
      日本語文法学会
    • 発表場所
      早稲田大学

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公開日: 2015-05-28  

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