本研究では、古代日本語について以下の三点を論じた。第一は、これまで理論的な位置づけが明確とはいえなかった述語形式の位置付けである。大きく二種に分ける理解を提案し、そのうちの一種(アスペクト及びパーフェクトに関わるもの)が動詞語尾との強い関連(歴史的・原理的な連続性)を持つ点で、ヴォイスに関わる形式と共通点があることを示した。第二は、「文法化」研究のあり方の検討である。「けり」を中心に、述語形式の意味変化と体系とのかかわりの問題を検討した。第三は、動詞基本形の問題である。アスペクト形式(「つ」「ぬ」)が持つ用法の広がりとのかかわりについても見通しが得られるような、基本形の理解を追究した。
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