研究課題/領域番号 |
24520513
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 皇學館大学 |
研究代表者 |
毛利 正守 皇學館大学, 文学部, 教授 (70140415)
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研究分担者 |
尾山 慎 大阪市立大学, 文学研究科, 研究員 (20535116)
佐野 宏 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (50352224)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本古代語 / 倭文体 / 訓読 / 仮名 / 国語学 |
研究概要 |
東アジア漢字圏において、日本は、もともと自国の文字を発明せず、中国の漢字を仮借することによって日本語の書記を始めざるを得なかった。本研究は、仮借文字の仮名化を広義の訓読の環境のもとでの文字属性の転換結果として位置づけ、中国の漢語を用いながら、それを訓読することによって日本語へと転換させていったことを明らかにするものである。 毛利は今年度、中国の少数民族ナシ族の使用言語であるナシ語の現地調査を行った。中国から漢字が将来した当初、日本にあって漢文を修めた日本人によってのみ、書記する日本語がはじまり、その書記言語と口頭言語とは遊離した存在であった。日本の事柄を書記しながらも中国語である漢文体でしか記せなかった時代を経て、漢語を訓読することによって日本語をだんだんと獲得し、漢文体からはなれた日本語文の文章・文体を誕生させた。その過程の解明は、今も中国にありながらナシ語を使うナシ族の言語規範を調査することによって、甚だ得る所が多く、今回はナシ族の歌謡をテキストに、歌謡の表記の仮借に関して、中学生から大人まで広くアンケート調査を行い、日本語と同じ膠着語であるナシ語から日本語の書記言語の規範を探り、詳細な調査を試みた。 研究分担者の尾山は、萬葉集における略音仮名の分布と使用頻度の詳細な調査を行い、おなじく分担者の佐野は、日本書紀における倭音の分布と使用頻度の調査を進め、それぞれに着実な研究成果をあげることができた。各々の成果を持ち寄って、活発な研究会を開催し、初年度の研究方向を見据え、また基礎を固めて次年度への研究へと発展させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心をなす中国少数民族の使用言語であるナシ語から、古代日本語の仮借表記をさぐるための現地調査を行った。今年度はこれまでの調査に基づいて新たにナシ語の歌謡をアンケート素材としての漢語とナシ語の相関についてアプローチし、それを日本語の黎明期に中国から将来した漢語と日本語との相関を探る一つの研究手法に生かして、漢語を訓読することによって、あるいは仮名形成の相関によって書記の日本語を誕生させた過程の解明を進めることができた。 分担者の日本書紀や萬葉集を通しての調査とあわせて、着実に研究を押し進めることができたと思う。
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今後の研究の推進方策 |
中国少数民族のナシ語から古代の日本語を解明していくことは、甚だ独創的な研究手法であり、今年度の現地調査での研究成果から大きな手応えを感じているので、今後も、実地調査を継続し、仮名字母の標準化を考える端緒としていきたい。また、日本書紀の仮借表記における倭音の混入は、これまで書記区分論の観点からは議論されてきているが、倭音の出現頻度の調査をすすめ、萬葉集の標準的な仮名字母を考える上で、仮名としての標準化に関わって、倭音の現れ方を検証し、日本書紀歌謡や訓注における倭音と標準仮名字母との相関も明らかにしていき、総合的な古代日本語の解明を目指すものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に研究の中心をなす、中国でのナシ族に対する現地調査のための渡航費用等に研究費を使用する計画である。 今後、分担者も同行して中国での調査をする計画もある。
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