前年度やり残していた亀岡市中部の曽我部町での談話収録調査を2015年5月6日に実施した。収録談話の文字化作業は業者に委託し、8月30日に文字化されたデータを受け取っている。以上で計画していた調査はほぼ終了した。後は、調査票や談話文字化資料を点検し、必要ならフォローアップ・インタビューをする心積もりであったが、2015年9月10日にクモ膜下出血を起こして手術入院し、それにともない半年間の休職ということになってしまった。したがって、2015年度中の研究活動も休止せざるを得なかった。 今年度行った談話収録調査(亀岡市曽我部町70代女性2名による談話)により得られた資料により以下のようなことがわかった。 奥村三雄「京都府方言」(楳垣実編『近畿方言の総合的研究』1962年、282頁)に、「この書イテヤ形は、上述口丹後・奥丹波地方の他、船井・南桑田・亀岡の口丹波でも、かなり使用されるが、この口丹波には、れっきとした書カハル形が存しており、書イテヤ形は、むしろ、親愛語となっている。つまり先生が書カハッタ~兄チャンが書イチャッタ、という様な使い分けが存するのである」と記述されている。文字化資料には、ちょうどこの記述と並行するような使い分けが認められた。なお、小学校からの同級生同士の談話で、その同級生を話し相手に、また子や孫を話題にテヤ敬語(=書イテヤ形)を用い、先生を話題にしてハル敬語(=書カハル形)を用いる他に、大半の同級生にもハル敬語を用いているので、ハル敬語は上位だからというより、心理的距離がある場合に用いられるという解釈もできそうである。 形態面についても、ハル敬語が一段活用動詞に続く際、~ハル、~ヤハルだけでなく~ヤルとなる場合があることがわかった。また、存在動詞に続く場合については、テヤ敬語の場合オッテヤとなるが、ハル敬語の場合オラハルが多いがイハル、イヤルも出現している。
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