本研究は、京都語に隣接する京都府口丹波方言の敬語展開の現状を明らかにすることを目ざしたものである。口丹波地方では、従来、尊敬語として機能するハル敬語と、親愛語として働くテヤ敬語とが併存し、使い分けられていた。しかし、2012年から2015年までの現地調査の結果、京都市に近い南東部、特に中心部の亀岡地区で、テヤ敬語が廃れつつあることがわかった。そして女性は京都市女性話者に近い敬語運用を行い、男性は京阪地方で盛んな軽卑語のヨルを取り入れ、テヤ敬語の役割の一部を担わせつつある。 また、ほぼ全域で、存在動詞がハルに承接する場合、オラハルとイハルないしイヤハルとのあいだでゆれがみられることがわかった。
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