研究課題/領域番号 |
24520517
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
三保 忠夫 神戸女子大学, 文学部, 教授 (60093811)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宮内庁書陵部鷹書 / 鷹詞研究 / 鷹書研究 / 日本放鷹文化史 / 松江藩放鷹文化 / 鷹歌研究 / 日本の鷹書 / 鷹狩と鷹書 |
研究概要 |
1,先ずは、できるだけ多くの「鷹書」写本に当るべきだと考え、宮内庁書陵部〈4回〉を中心とする原本(写本、及び、版本)調査を積極的に行った。調査順に列記すれば、天理大学図書館、京都府立資料館、立命館大学、龍谷大学、広島大学、大阪大学、蓬左文庫、岩瀬文庫、東京都立中央図書館、内閣文庫、静嘉堂文庫、国立国会図書館、東京芸術大学、前田尊経閣文庫、国文学研究資料館、富山大学、神宮文庫、松江県立図書館となる。2度~4度と重ねて調査したところもある。 2,富山大学附属図書館の医薬学図書館には、事情も分からず、素性不明として一群の写本が書庫に寝かされていたが、旧松江藩の医師になる貴重な「鷹書」群であることが判明した。 3,宮内庁書陵部所蔵本、及び、内閣文庫蔵本を中心に、「鷹書」の相承、書写、伝得に関わった人物――松江藩関係、公儀鷹匠・鷹匠同心・御鷹犬牽関係、また、中古・中世公家、中世武家、近世諸侯・同藩士等、絵師・僧侶、有職故実家・国学者・文人、連歌師等など――について詳しく調査した。中世・近世の人物が多いが、この過程で、日本放鷹史における重要な業績・それを残した人物、また、公儀雑司ヶ谷組の御鷹部屋関係者の具体的な言動などが判明した。 4,松江藩鷹方の手になると覚しい『鷹詞 江戸ト出雲之相違書上』を注解し、考察した。「鷹詞」の「江戸と出雲の相違」とは、方言そのものの問題ではなく、出雲(松江藩)の鷹術が沈滞気味の古い流儀にあったところからの問題かと帰結してよさそうである。 5,「鷹詞」研究のための資料(『西園寺鷹百首』『龍山公鷹百首』を含む)として益多いものを選考し、かつ、翻刻、要語索引を作成した(なお、継続して作業中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1,諸機関に所蔵される「鷹書」を数多く拝見でき、「鷹書」相互の種々の脈絡が見え出した。『放鷹』(宮内省式部職編)の「本邦鷹書解題」(執筆福井久蔵)では、この点が手薄だった。それを十分補い得るところまで来たように思う。 2,放鷹文化史上、主要な「鷹書」、また、それに関与する「人物」は、おおよそ調査できたのではないかと自認する。 3,特に、松江藩松平家の「放鷹文化圏」の内情が判明してきた。書陵部書蔵の「鷹書」の8割半ばを越える点数は、この文化圏にて生れた。 4,従来、「鷹詞」といわれる実体が不明瞭であった。これが明瞭になりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
1,研究面では、書題に「鷹書」との語を有する資料について集中的に検討する。 2,特に、今後には、『西園寺鷹百首』『龍山公鷹百首』などの、和歌と鷹詞との関係を究明したい。 3,所々に所蔵される写本の調査を続ける。尊経閣文庫、学永青文庫、彰考館文庫、宮城県立図書館などは入念な調査を行ないたい。 4,東京国立博物館を始め、調査対象機関によっては、閲覧許可を得るまでに複雑な段階、また、日数を要することがあり、調査が容易に行ない得ない。公務の都合上、東京滞在も長期は許されない。こうした日程上の難問を如何に切り抜けるかが一番の課題となっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
(A)宮内庁書陵部書蔵「鷹書」の原本調査につき、次年度は150点を目標としたい。また、宮城県立図書館(仙台)、永青文庫(熊本)、その他を調査し、それぞれの所蔵本(鷹書)の拠って立つ文化圏を究明したい(奥州伊達藩、肥前細川藩など、放鷹文化圏の考察)。 (B)韻文学資料と「鷹書」との関係を更に分析したい。 以上により、研究費の使用計画は次のようになる。[以下、金額単位:千円] 1,物品費:参考図書 50,SDカード 20,USBメモリー 80[合計150]。2,旅費:東京(6回×@81)〈1回の内訳:交通費@30,宿泊費3泊×@13,日当4×@3〉小計486。 仙台(1回×@59)〈1回の内訳:交通費@40,宿泊費1泊×@13,日当2×@3〉小計59。 熊本(1回×@45)〈1回の内訳:交通費@30,宿泊費1泊×@11,日当2×@2〉小計45。[合計590] 3,人件費:データ整理アルバイト 1名×0.8×21時間。[合計16.8] 4,その他:紙焼写真350(書陵部・国文学研究資料館・尊経閣文庫,その他)。文具・紙筆など100。[合計450] 総計1206.8
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