研究実績の概要 |
これまで複合動詞の言語分析には定量的な調査を踏まえた研究が少なかったが、近年利用できるコーパスも大きくなっている。そこで統計的なデータと統語的な情報を用いた調査から複合動詞の構成要素間の意味関係をとらえ類型化し、どのような意味規則によって構成動詞が結びついているかについて研究を行った。 平成24年度、25年度では、5億文のコーパスを使って、約2700語の複合動詞を対象にコサイン類似度で複合動詞が前項、後項動詞のどちらと類似度が高いかを計算し、また2700語の複合動詞に対して格が構成動詞からどのように継承されているかを調査した。 最終年度の平成26年度では、作成したデータを用いて、上記2つの観点から複合動詞と構成動詞間の統語と意味のミスマッチについて分析を行った。(1)統語的継承性V1, 意味的類似度V1, (2)統語的継承性V1,意味的類似度V2, (3)統語的継承性V2、意味的類似度V1,(4)統語的継承性V2、意味的類似度V2(5)統語的継承性V1とV2、意味的類似度V1, (6)統語的継承性V1とV2、意味的類似度V2にわけ、(1)~(4)については、複合動詞を構成する際に構成語の格がどのように変わったかも調査した。格が片方の構成動詞から抑制されずに複合動詞に継承されたもの【付加】、格が交替したもの【交替】、格が抑制されたもの【抑制】にわけて調査・分析を行った。 理論的研究では複合動詞のヘッド(主要部)は後項動詞であるという解釈が一般的であるが、影山(2013)の複合動詞リストのデータ観察のとおり前項動詞が担う役割も大きく、コーパスから統計的なデータに基づいて、複合動詞の構成語の意味的な役割や意味関係などについて考察することは重要な意義があったと考える。 (参考文献)影山太郎「語彙的複合動詞の新体系」影山太郎編(2013)『複合動詞の謎に迫る』ひつじ書房 pp.3-pp.46
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