本研究は、現代日本語の自発的な話し言葉に見られる「節連鎖構造」について、その実態を明らかにしようとするものである。特に、連用節が繰り返し出現することで、発話が長大化していく「多重的な節連鎖構造」について、『日本語話し言葉コーパス(CSJ)』、および(比較対象として)『現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)』という2つの現代日本語コーパスを用いて、分析を行った。 研究期間を通じて、研究成果の発表(書籍、論文、国際・国内学会での発表)を進めてきたが、最終年度である本年度は、節境界解析プログラムの開発、および最終的な研究成果の発表を実施した。 まず、当初の研究計画における課題として残されていた節境界解析用プログラムの開発を行った。名古屋大学大学院工学研究科佐藤理史研究室と共同でシステム開発を進め、手始めに、BCCWJに対して節境界を自動付与するプログラムを開発した。これは、形態素解析用辞書UniDicにより形態素解析されたテキストを入力として、節境界の位置と種類を特定してそのラベルを自動的に付与するものである。BCCWJ(コア)の一部に対して節境界ラベルを付与した結果は、国立国語研究所コーパス開発センターのウェブページ上で公開した。今後、このプログラムを話し言葉の節境界解析にも応用していく予定である。 また、国際シンポジウム(招待講演)、複数の学会・研究会などで、研究成果の発表を行った。そのうちの一つは、「言語処理学会 第22回年次大会 優秀賞」を受賞した。 これまで、現代日本語の節連鎖構造の実態を定量的に分析した研究は存在しなかった。コーパスにもとづいて、実際の話し言葉でどのような節連鎖構造が生じているのかを明らかにした点で、当初の研究目的は達成できたと言える。
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