研究課題/領域番号 |
24520525
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 義明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80161181)
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キーワード | 生成文法 / インターフェース / 話者視点 / 時制解釈 / 指標性 / 直示性 |
研究概要 |
本研究は、生成文法の極小主義プログラムの枠組みで、時制、モダリティー、人称代名詞等の指標性(indexicality)現象において基軸となる「話者の視点」の統語的具現化の考察を手がかりとして、統語論と意味論等の他部門とのインターフェースの解明をめざすものである。具体的には、(1)話者の視点の統語的具現化メカニズムの解明、(2)談話機能の統語的具現化メカニズムの解明、(3)統語的具現化の観点による言語インターフェース理論の構築、の点を目標としている。(1)の目標については、Khomitsevich (2008)、Wurmbrand (2007, 近刊)、Kaneko (2013)等の批判的検討を行った。(2)については、Haegeman (2012)を中心に機能範疇の普遍的統語階層を仮定することによって談話機能と統語構造のインターフェース解明をめざすカートグラフィー理論を批判的に検討するとともに、普遍的統語階層を仮定せず,意味論等の要因からの帰結として導き出す可能性も探った。(3)については、Gallego (ed.)(2012)等のフェイズ理論の文献を中心に、言語インターフェース理論の考察を行った。併せて、文献の収集と整理、関連研究者との交流による情報収集や講演会開催を行った。以上の研究活動の成果として、金子(2014)「英語における時制の一致の認可と時制解釈について」を発表した。同論文では、英語の定形従属節に見られる時制の一致現象に焦点をあて、時制の一致の環境では、従来指摘された直示的過去時制が生起できない制限に加えて、非直示的現在時制も生起できないことをを指摘した。さらに、二重接触現象では、従来指摘されてきた従属節の述語が表す事象だけでなく、(話者ではなく)主節の主語のモダリティーも二重接触現象を示すことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3ヶ年の研究であり、平成24年度は研究基盤年度、平成25年度は研究拡充年度、平成26年度は研究総括年度と位置づけられている。研究拡充年度である平成25年度は、前年度の研究を踏まえ、(1)話者の視点の統語的具現化メカニズムの解明、(2)談話機能の統語的具現化メカニズムの解明、(3)統語的具現化の観点による言語インターフェース理論の構築、の3つの目標の拡充研究を行い、平成26年度の研究総括に向けての研究拡充を行った。その成果を金子 (2014、近刊)としてまとめたが、発話時と直示的定形節の評価時との結びつけが「同時」の指定ではなく、「同一性」の指定である可能性が強まり、評価時と指示時、および指示時と事象時の関係づけとの相違が浮き彫りとなった。その結果、話者の視点と直示的定形時制の評価時は一種の束縛現象と分析する経験的根拠が得られ、話者の視点の統語的解明にとって重要な示唆をえることができた。なお、平成25年度の研究では、音声化に関するインターフェースの知見が少なかったので、最終年度はこの点にも留意して研究をすすめたい。以上から、平成25年度の研究に関しては概ね順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
3ヶ年の研究の最終年度である平成26年度は、過去2年間の研究成果を踏まえて、理論的研究、個別テーマ研究、文献・研究情報の収集および整理を行い、研究総括に向けた研究活動を行う。(1)話者の視点の統語的具現化メカニズムの解明の研究については、前年度までの研究を継続し、Khomitsevich (2007)、Kaneko (2014)等の批判的検討を中心に、時制の一致現象のより精緻な分析を行う。(2)談話機能の統語的具現化メカニズムの解明については、Alcazar and Saltarelli (2014)、Cormany (2013)、Medeiros (2013)等の命令文の分析を検討し、話者の視点に加えてAddressee(受話者)の統語的具現化を検討する。これによって極小主義プログラムにおける遂行分析の位置づけをより明確にするとともに、カートグラフィー理論に対する帰結を検討する。(3)統語的具現化の観点による言語インターフェース理論構築については、Gallego (eds.) (2012)を中心に、インターフェース理論としてのフェイズ理論の妥当性を考察する。 (1)、(2)、(3)に加えて、文献の収集と整理、人的交流にによる研究情報の交換を行い、研究成果を発表するとともに研究の総括を行う。
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