研究実績の概要 |
本研究は3ヶ年の研究であり、平成24年度の基盤的研究、平成25年度の拡充的研究を踏まえ、平成26年度は総括的研究を行った。本研究は、(1)話者の視点の統語的具現化メカニズムの解明、(2)談話機能の統語的具現化メカニズムの解明、(3)統語的具現化の観点による言語インターフェース理論の構築に関して総括的研究の3つを目標としている。(1)については、Uribe-Echevarria (1994)、Ogihara (2011)、Ogihara and Sharvit (2011)等を中心に、二重接触現象をはじめとする定形補部節の時制解釈の研究を行った。(2)については、Arcazar and Saltarelli (2014)、Speas and Peggy (2003)等を中心に、遂行仮説との関わりを中心に、カートグラフィーアプローチと極小主義プログラムとの統合の可能性を検討した。(3)については、Chomsky (2012, 2014)等を中心に、フェーズ理論における統語論・意味論・語用論インターフェース特性の統語的具現化を検討した。その成果はKaneko (2014)、金子 (2015)として発表された。特に、金子 (2009)で主張された遂行句PfmPの二重接触現象における役割が明らかとなった。二重接触現象では、従属節CPがLFで主節TPの外側に移動し、移動したCPの定形時制の評価時は遂行句PfmP主要部から発話時と同一と同定され、一方痕跡位置のCPの定形時制の評価時は主節の動詞よって主節の事象時と同一と同定されると分析することができる。この結果、二重接触現象もつ時制解釈の2重性が説明される。このような結果から、遂行句Pfmを中核とする新たな遂行仮説を、より制限力の強いフェーズ理論において探求すべき課題であることが明らかとなった。
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