研究課題/領域番号 |
24520529
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
朝賀 俊彦 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80272087)
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キーワード | 語彙認可アプローチ / 範疇変化 / 並列モデル / 指示性 |
研究概要 |
本研究では、英語を中心に、イディオム表現や複合語形成、欠如的形容詞による名詞修飾表現などを取り上げ、名詞がある一定の環境において本来的な名詞としての特性を喪失するとともに、一方で新たな特性を帯びる現象を主な研究対象とする。本研究の目的は、統語構造と意味との対応関係を語彙認可アプローチに基づいて分析することにより、範疇変化のメカニズムを解明することである。語の範疇とその特性変化を、統語特性のみ、または意味特性のみの観点からとらえるのではなく、統語と意味の対応関係というインターフェースの問題としてとらえ直す点で、統語的アプローチ、意味的・機能的アプローチとは異なる新たな分析方法を示している。 平成25年度は、構文特性の分解に基づき、疑似部分構造にみられる数量表現としての例外的特性を説明する分析を行った。この分析では、名詞の範疇変化に際して観察される語彙範疇と機能範疇の中間的特性は、構文を構成する複数の要因が独立に変化したことの相互作用の結果として捉えられる。このような中間的特性を持つ要素の存在は、語彙範疇と機能範疇の二分法に対して、より精緻な範疇分類の可能性を示唆している。 さらに、名詞の範疇変化に伴うプロファイルのシフト、統語と意味の非対応を示す名詞修飾表現の意味計算における統語的主要部名詞の解釈という二つの問題に対して、クオリア構造に基づく分析の可能性を検討した。また、特に後者の問題と関わり、意味的な平行性にもかかわらず英語と日本語では統語形式に違いが見られる表現について、対照的研究の観点から、意味の統語的具現に関する考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、統語構造と意味との対応関係を語彙認可アプローチに基づいて分析することにより、範疇変化のメカニズムを解明することである。これまでの調査から、範疇変化において構文が果たす役割の重要性が明らかになったため、特に範疇変化の連続性にみられる構文の関与に焦点をあてた研究を、当初計画の平成26年度から繰り上げて、平成25年度に行うこととした。具体的には、構文特性の分解に基づいて、名詞と数量詞の中間的特性を持つ要素が出現するメカニズムの分析を行った。また、平成25年度の当初計画にある範疇変化や名詞表現の解釈におけるクオリア構造の関与、日英語の対照分析はこれと並行して進めた。 平成25年度は、範疇変化の連続性についての研究を優先して進めることとなり、結果的に、当初の年度計画にあげたクオリア構造と日英語の対照分析に関する個別的研究の進め方については、計画を一部変更することとなったが、上位の目的として設定している範疇変化の環境要因についての分析は進んでおり、大枠での研究の方向性は維持されている。優先して行った範疇変化に見られる連続性の分析は、名詞表現の領域において構文特性の分解の帰結を示すとともに、より精緻な範疇分類の可能性を示すなどの成果をあげており、上に挙げた研究目的に照らした達成度については、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、これまでの成果に基づき、関連する言語現象の分析を行うとともに、本研究のまとめとして、名詞の範疇変化を事例とした範疇変化のメカニズムを統語構造と意味の対応関係の変化に基づいて説明する分析の妥当性を検証し、言語の変異・変化に関する研究に対して本研究が持ちうる帰結について考察する。考察の中では、言語における連続性の問題に対する研究の中で本研究の位置づけを確認するとともに、連続性の問題に対する並列モデルの有効性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、物品費執行の際の端数による。 当初計画に計上した物品費に加え文献資料の充実等に充てる。
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