本研究では、これまで和田が発展させてきた時制とその関連領域(助動詞・アスペクト・モダリティ・心的態度・証拠性)を包括的に扱える時制理論に、廣瀬が提唱する公的自己・私的自己ならびに公的表現・私的表現に関する理論(ならびに、その発展形である「言語使用の三層モデル」)と和田が提唱する「C-牽引(話者意識への引き寄せ)」という概念を導入することで、より体系的かつ一般的な観点の裏付けをもった時制モデルとして発展させることを目指した。主に、この発展版の時制モデルを基に、日本語と英語・フランス語を中心とした西欧諸語が示す時制現象の相違点ならびに類似点を説明した。
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