研究課題/領域番号 |
24520533
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
藤 正明 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (30313381)
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キーワード | 短縮レジスター / be動詞削除 / 繋辞削除 / 海事英語 / 動的文法理論 / AAVE / 言語習得 / 言語使用域 |
研究概要 |
昨年度行った母語話者(米国人、女性、20代)に対する容認度判定実験の結果に再考を加えるとともに、追加実験(同女性、6月21日実施)も行い、海事英語のbe動詞削除条件をさらに詳細に観察した。次の例文3つは追加実験の結果で、下線部は削除箇所を示している。<実験文始まり>Is the engine a diesel or a turbine? --- The engine {(1) is a / (2) *__ a /(3) __ __ } diesel, sir.<実験文終わり> (2)と(3)の容認度の違いは、昨年度提案した「レジスター保持制約(いったんある特定のレジスターで文を始めたら、最後までそれを保持せよ)」ではうまく捉えられない。実験文では主語において定冠詞を保持している点で通常のレジスターが選択されていることになるので、同制約ではその後短縮レジスターに移行できないことを予測する。しかし、(3)は容認可能となっている。 この新たな問題の解決には、海事英語以外の短縮レジスターでどのようにbe動詞削除が行われるのかについての詳しい情報を得る必要があると考え、アフリカ系アメリカ人英語(AAVE)と幼児英語の先行研究を調査した。その結果、どちらのレジスターでも、補語が名詞句であるbe動詞は削除されにくいという制約(名詞句制約)があることがあきらかとなった。この名詞句制約が、実験文(2)と(3)の区別を行うために有効であると仮定し、研究の中間発表(青山英文学会、6月25日)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海事英語における短縮レジスターの一般性と特殊性に関する知見を得るのが本研究の主な目的であることを鑑みると、この目的に沿った研究が進行しているという点でおおむね順調に進展していると言えよう。すなわち、研究実績の概要でも述べたように、海事英語に関する追加実験で明らかとなった容認度の違い(Is the engine a diesel or a turbine? --- The engine {(1) is a / (2) *__ a /(3) __ __ } diesel, sir.)を説明するため、海事英語以外の短縮レジスターであるアフリカ系アメリカ人英語や幼児英語のbe動詞削除を研究して、これらのレジスター間の類似性の存在を推定しているという点で、研究目的に沿った研究活動が進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、英語母語話者に対する容認度判定実験を続けるとともに、研究の総まとめを行い、研究発表を行いたい。研究目的の遂行を加速させるため、データ収集の方法(電子コーパスの利用等)を再考し、期限内に一定の効果を上げることができないと判断した方法は実行せず、容認度判定実験を中心にデータ収集を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に海外における研究発表を予定していたので、渡航費、滞在費等を確保する必要が有ったことと、英語母語話者に対する実験に関しては、他の研究費で実施した関連研究に関する実験の際に、追加実験ができたこと、などによる。 次年度は残額を、(1)海外における学会発表、(2)母語話者に対する容認度判定実験、(3)母語話者に対する実験を実施する際に必要な機器や文献、を購入する予定である。
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