研究課題/領域番号 |
24520534
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大竹 芳夫 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60272126)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日英語比較研究 / 名詞節化形式 / 指示表現 / S+turn+out節構文 / 実情や結末の判明を伝える構文 |
研究概要 |
本研究目的は、日英語の指示表現と名詞節化形式の選択・出没という言語事象を通して、両言語の普遍性と個別性を原理的に解明することである。研究初年度の本年度は基礎的資料を収集、観察、分析した。本年度実績として、大竹芳夫(2013)(「S+turn+out(+to+be+that)節構文の主語要素の選択と出没に関する意味論的研究」『言語の普遍性と個別性』第4号, pp.1-25. 新潟大学大学院現代社会文化研究科.)を挙げることができる。S+turn+out(+to+be+that)節構文は談話で頻用されているにもかかわらず十分にその意味特性は解明されてはいない。本学術論文は、本構文の主語要素の出没と選択に関して意味論的視点から次の点を実証的に明らかにした。第一に、本構文の基本的意味は、先行文脈や話題中のことがらの実情や結末といった容易には知りがたい情報が調査や研究などの経緯を経て明らかになることを表現することであることを確認した。第二に、主語要素にはitのみならず、実情や結末を表す語彙名詞句、関係代名詞which、指示代名詞thatも生ずること、さらには主語要素が表出されない現象が広く確認できることを論じた。第三に、主節要素“S + turn + out”部が格下げを受けて文頭、文中、文末に独立して生起し、実情や結末の判明の伝達を合図する談話標識として機能する用法が観察されることを指摘した。第四に、主語要素Sの省略現象について意味論的視点から検証し、実情や結末を伝える表現や談話標識が本構文を導くなどして、先行文脈や話題中のことがらとのつながりが保証されるような場合には、先行情報を指し示す主語要素Sの存在理由が意味的に希薄になり、結果的に主語要素Sが表面に現れない現象が生ずることを明らかにした。本年度は当初目標を概ね達成できた。次年度以降も研究成果を国内外に発信してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の本年度は実証的研究を目指し、研究対象の日英語構文に関する基礎的資料を収集、観察、分析した。また、基本的文法概念や問題点を整理しながら、本研究課題の日英語の指示表現と名詞節化形式の選択・出没事象を理論的枠組みの中で分析する基礎を構築し、言語学の研究成果を英語教育に活用する方策についても検討を進めた。本年度の成果実績として、大竹芳夫(2013)(「S+turn+out(+to+be+that)節構文の主語要素の選択と出没に関する意味論的研究」『言語の普遍性と個別性』第4号, pp.1-25. 新潟大学大学院現代社会文化研究科.)を挙げることができる。本年度は当初の目標を概ね達成することができた。次年度以降は本年度の知見をさらに深化させながら、成果を国内外に向けて積極的に発信する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究を踏まえて、明らかになった問題点を整理し、さらに、神尾(1990)『情報のなわ張り理論』、中右(1994)『認知意味論の原理』等の日英語に関する情報理論や認知理論、Panagiotidis (ed.) (2010)等の補文形式に関する統語理論、LakoffやSweetserの認知意味論、Langackerの認知文法理論、Sperber and Wilsonの関連性理論、Kunoの機能文法理論及び最近の生成文法理論に基づく理論的研究成果も踏まえながら、日英語の指示表現と名詞節化形式の選択や出没がどのように理論的枠組みに位置づけられるかについて検討する。また、談話や発話場面を分析し、指示表現の選択と名詞節化形式の生起が語用論的要請にどのように動機付けられているのかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、パーソナルコンピュータ、外部記憶装置等の消耗品の単価が予定時よりも下がったために次年度への繰越研究費が生じた。次年度は、繰越研究費を活用しながら、主に次の研究経費を請求する予定である。(1)初年度に引き続き、関連する言語理論・英語学関係の文献を購入、複写することが必要である。(2)研究対象の用例の整理保存に光磁気ディスク、情報カード、クリアファイルを利用する必要がある。(3)関連分野の問題を研究する国内研究者との情報交換や資料収集のために国内旅費が必要である。(4)インフォーマントから必要な情報を得るために謝金も必要である。
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