研究課題/領域番号 |
24520535
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
秋 孝道 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60192895)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 焦点要素 / 非前提的 / 新情報的 |
研究概要 |
平成24年度の研究では、焦点構文の焦点要素の諸特性に関する実証的な考察を行った。まず、先行研究の資料収集を進め、これまで明らかにされてきた焦点要素の統語的、談話機能的、音韻的特性に関して如何なる事実観察がなされてきたか、またどのような考察・分析が提示されてきたかを丹念に調査した。その上で、「焦点に特有であると考えられてきた特性が、それぞれの焦点構文において本当に観察されるのか」という問題意識を常に念頭において、焦点構文の諸特性を綿密に考察した。この際に着目したのは、主に、次のような項目である。 ①焦点要素が「移動要素凍結性」を示すのか否か ②焦点要素が「別の談話機能付与に関わる移動」を受けるのか否か ③焦点要素を含む焦点構文が「移動の島」を形成するのか否か ④焦点要素が「焦点強勢」を担うのか否か ⑤焦点要素が「音調の切れ目」を伴うのか否か このような作業を通して、焦点としての条件を完全に満たす焦点要素と、そうでない焦点要素を峻別し、後者の焦点要素を持ち「焦点構文の非焦点的分析」の対象なる焦点構文を特定することに努めた。 さらに、当該の焦点構文の焦点要素に関する調査研究を進めた。特に、焦点要素とその周辺部の要素の考察に集中して取り組んだ。そして、従来の分析法と異なり、当該焦点構文の「前提部分」を除く部分、つまり、主語場所句倒置文の動詞・焦点主語要素の連鎖、分裂文の虚辞・連辞・焦点要素の連鎖、疑似分裂文の連辞・焦点要素の連鎖を、「非前提的」もしくは「新情報的」と想定することが可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で24年度に行う予定であった「焦点構文の焦点要素の諸特性に関する実証的な考察」をほぼ完了することができた。また、25年度に着手する予定であった「焦点要素とその周辺部の要素の考察」を24年度に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究では、引き続き、当該の焦点構文の焦点要素に関する調査研究を進めたい。当該焦点構文の「前提部分」を除く部分を、「非前提的」もしくは「新情報的」と想定することを裏付ける作業を行いたい。そして、当該焦点構文の二次的な焦点解釈は通常文の焦点解釈メカニズムによってなされるという次の段階への研究を進めたい。 このような作業と同時並行的に、当該焦点構文の「前提部分」の談話機能特性の考察も進めていきたい。現在のところ、本研究代表者は、この談話機能を「旧情報的話題」と考える可能性を念頭に置いているが、この妥当性を検証すべく「前提」「旧情報的話題」という二つの談話機能概念の実証的な比較検討作業を行いたいと考えている。「話題要素」の特性に関しては、統語的、談話機能的、音韻的研究が十分に進められているので、これらの研究を基礎にした作業が可能であろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究においては、研究が順調に進み、思いの外、備品・旅費に計上していた予算が少なくて済んだ。そこで、本年度は、計画どおり、東北大学及び静岡大学への研究調査・資料収集のための出張を行い、新たな研究書・文献の入手、他の研究者との意見交換、母語話者への言語知識提供の依頼などが必要となるので、関連予算を計上するが、新たに学会などで意見交換を行った研究者との間で研究成果を検討すために必要となる旅費を計上することにする。
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