本年度(最終年度)の研究においては、昨年度と並行的に、当該焦点構文の「前提部分」の談話機能特性の考察も行い、この談話機能を「旧情報的話題」と考えることの妥当性を検証するために、「前提」「旧情報的話題」という二つの談話機能概念の実証的な比較検討作業を進めた。「話題要素」の統語、談話機能、音韻に関わる従来の研究をもとにして、「移動要素凍結性」、「移動の島」、「音調の切れ目」などの他に、「文頭譲歩表現」、「文末追加表現」などの項目についても考察した。具体的には、非副詞的な「文頭譲歩表現」、「文末追加表現」の特性を明らかにし、ReinhartやNakajimaの構造分析に依拠することによって、例外的規定を設けることなくこれらの特性を理論的に説明できることを明らかにした。さらに、これらの表現が持つ情報構造特性を明らかにし、当該焦点構文の一つである主語場所句倒置構文との類似性の説明方式を探る試みをした。また、「前提部分」の実証的研究をさらに進めて「前提部分」が担う談話機能の性質を明らかにする取り組みを行い、加えて、当該の焦点構文の派生に関わるメカニズムの解明を目指し、分裂CP仮説を想定した理論的研究を進めた。この際、「前提部分」の移動に加え、「非前提部分」の語順派生の仕組みの解明を進めた。他の焦点構文に比べて、より複雑な語順を持つこれらの「非前提部分」の派生のメカニズムを解明することができれば、当該焦点構文の本質を捉えることが出来ると考えたからである。これらの研究成果は、27年度と28年度に出版される研究論文集に収録される予定である。
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