研究課題/領域番号 |
24520537
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堀田 優子 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (90303247)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 主観性・客観性 / 認知文法 / 構文 / グラウンディング |
研究概要 |
今年度は、「主観性(主体化)/客観性(客体化)」に関連する先行研究の検証と、研究対象とするいくつかの構文の先行研究の検証を行った。また、英語の構文(同族目的語構文や移動表現、視覚的移動表現)については、大型コーパス(Bank of EnglishやBritish National Corpusなど)からデータを抽出し、コンサルタントに確認した。また、特に今年度は、客観的な事態把握を反映する英語において、中でも特徴的な構文の1つである、同族目的語構文に関して、これまでの先行研究で示されてきた構文的特徴を、グラウンディングの観点から捉え直した。 認知文法における「グラウンディング(grounding)」とは、ある事態の描写(命題内容)を、「グラウンド(ground)」と呼ばれる談話の参与者(話し手・聞き手)や発話状況に関係づけることであり、言語には、特定の談話文脈内の指示関係を設定する機能を持つ「グラウンディング要素」が多く含まれている。例えば、英語の場合、不定冠詞や定冠詞などのグラウンディング要素を用いた、名詞類に関わるグラウンディングを通して、談話内で話し手と聞き手が自分たちの注意を同じ指示対象に向けることが可能となる。 これまでの構文研究は、単文レベルの表現を分析対象にすることが多く、同族目的語構文に関しても、単に、統語的特徴として、同族目的語は不定冠詞や定冠詞を伴うことが多いことが指摘されていたが、グラウンディングの観点からその現象をとらえ直すことで、定冠詞や不定冠詞の働きが同族目的語構文の解釈に密接に関係することが再認識できた。こうした研究成果(の一部)を「グラウンディングの観点から見た同族目的語構文」というタイトルで発表し、「同族目的語構文の解釈とグラウンディグ」というタイトルの論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、同族目的語構文に関しては、グラウンディングの観点からその現象をとらえ直し、研究成果を発表することができたが、日本語表現との比較や、当初の計画で挙げた移動表現に関しては、まだ分析半ばであり、研究成果を発表するに至っていない。そのため、次年度以降も研究を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、まず、今年度の計画で挙げた(視覚)移動表現や、日本語表現との比較に関して、「主観性/客観性」の観点からの分析を継続して行う。 さらに、引き続き、「主観性(主体化)/客観性(客体化)」に関連する先行研究の検証と、特に、度量句を伴う表現に関する先行研究の洗い出しと検証も行う。また、大型コーパスからのデータ収集を行い、日本語についても、対応する言語データを、国立国語研究所が提供するコーパスやWeb検索等を通して、適宜、採取する。そして、ここまでの研究の一部を成果として国内外の学会で発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、未使用の助成金が発生した理由としては、物品の購入額が当初想定していたよりも安くすんだことと、コンサルタントの協力に謝金が発生しなかったことなどが、主な理由である。次年度は、その分、国内外の学会で発表の機会を得て、数多く参加するだけでなく、そうした貴重な機会を通して、国内外の研究者との研究交流を図り、最新の研究情報や資料の収集にあたりたい。
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