研究課題/領域番号 |
24520540
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
服部 範子 三重大学, 人文学部, 教授 (00198764)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 強勢 / 韻律音韻論 / 音節 |
研究概要 |
本年度は、英語の好韻律性を明らかにするために時間軸に沿った強勢の刻み方の実証的研究として、韻律音韻論の枠組みで歌を利用して音符(リズム・パターン)と言語テクスト(歌詞)の組み合わせに関するテクスト・セティングの分析を進めた。 先行研究によれば、少なくとも英語のテクスト・セティングは予測可能で、英語の母語話者であれば難なくできるとされる。韻律格子と音節のマッピングは、大きく3つのステップでリズム的に強い位置に強勢音節を配置していく「音節配置アルゴリズム」を採用する。このアルゴリズムによるテクスト・セティングがうまくいかない例が報告されているが、本研究では、先行研究では避けられてきた一般的な歌について、このアルゴリズムで英語のテクスト・セティングはどの程度まで予測できるのか、またすでに指摘された以外の問題点はないのかを検討するために、一定の基準で選択した教科書に楽譜とともに掲載されている英語の歌を用いて、このアルゴリズムでテクスト・セティングを予測し、実際の楽譜と比較し検討を加えた。主な相違点は次のとおりである。 一般的な歌では休止で小節が始まることがあるが、アルゴリズムでは強拍の位置は必ず強勢音節が占める。また、アルゴリズムでは左から右に1つずつ強勢音節を配置していくので、実際の楽譜よりアルゴリズムによる予測では強勢音節同士の間隔が大きくなる傾向にある。さらに、アルゴリズムでは音節を伸ばして発音することは考慮されておらず、楽譜に休止がある場合、予測と実際の差が生じる。 本研究によって一般的な歌におけるテクスト・セティングのアルゴリズムに残された課題が明らかになり、従来指摘されている以上に英語の好韻律性を明確にすることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題を含むここ数年の研究テーマは、変異理論の枠組みにおける現代イギリス英語の強勢変異出現メカニズムの分析である。英語母語話者を被験者とした実験における被験者の音声的振る舞いの背後にある英語の好韻律性について、時間軸に沿った強勢の刻み方という観点から実証的研究を行うことを目指しているが、本年度は英語のテクスト・セティングに関するアルゴリズムの検討を行い、アルゴリズムによる強勢配置の予測と実際の強勢音節配置の相違点を明らかにし、さらにアルゴリズムに残された課題を明らかにすることができた点において、おおむね順調に研究は進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、韻律音韻論の枠組みを用いて英語のテクスト・セティングを分析した先行研究をよく検討し、英語母語話者が即座に排除する音符と言語テクストの組み合わせについて理論面での研究を参考にしながら、独自のデータとして類型論的にリズムの異なる言語(英語、フランス語、日本語)のデータを収集分析する。また、イントネーションの核の位置より前の部分については比較の前提となる理論的枠組みが統一されていないために研究がほとんど進んでいないので、とくにフットの前の無強勢音節がリズムの構成要素としてどのような位置づけにあるのか、また言語構造との関連でこれらの音節をどのように扱えばいいのかについて検討を加える。 英語の好韻律性を考察するにあたって、音響音声学的分析による数値化を取り入れ、また時間軸に沿った強勢配置を記述・分析することで韻律音韻論を介して音声理論の充実に貢献する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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