研究課題/領域番号 |
24520540
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
服部 範子 三重大学, 人文学部, 教授 (00198764)
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キーワード | 強勢 / 韻律音韻論 / 音節 |
研究概要 |
本年度は英語のテクスト・セティング(韻律格子と音節のマッピング)について、韻律音韻論の枠組みにおける格子表記を用いて音符のリズムパターンを表示し、強勢のある音節を韻律的に強い位置に配置するという英語の音節配置アルゴリズムに基づいて音節長のパターン分析を進めた。音節配置アルゴリズムは英語の強勢についてその有無に基づく2つのレベルしか認めていないが、句動詞がテクストに含まれると、アルゴリズムではこれら2つの項目は別々の小節の第1拍に来ることを予測する。この配置は可能性の一つであるが、句動詞の後半が新しい小節を始めることも観察され、強勢の有無に加え第3のレベルの設定の必要性を指摘した。 この指摘は句や文レベルの強勢を考慮に入れる必要性を示唆するものである。先行研究で提案されている音節配置アルゴリズムはチャンツにおける音節配置を予測するものであるとの断りがあるが、一般の歌にも応用可能性は十分あり、8小節が歌詞のフレーズの単位であることを制約として取り込むと強勢のある音節を一定の時間内に圧縮して配置する効果が得られる。また、音節配置アルゴリズムが考慮に入れていない現象として新情報と旧情報の違い、および英語の核配置の際に問題となる、内容語ではあるが実質的な意味が空虚な語の扱いを指摘した。 本研究はテクスト・セティングにおける英語の強勢配置および音節長の分布を分析することによって従来指摘されている以上に英語の好韻律性を明確にすることを可能としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異理論の枠組みにおける現代イギリス英語の強勢変異出現メカニズムの分析をここ数年の研究テーマとしてきた。英語母語話者を被験者とした実験における被験者の音声的振舞いの背後にある英語の好韻律性について、時間軸に沿った強勢の刻み方という観点から実証的研究を行うことを目指しており、本年度は音節配置のアルゴリズムのさらなる検討を行い、先行研究ではチャンツなど限られた範囲の音節配置を予測するものという断りがあるが、チャンツ以外にも応用可能性があることを示すことができた点において、おおむね順調に研究は進展しているといえる
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今後の研究の推進方策 |
今後は類型論的にリズムの異なる言語(英語、日本語、フランス語)のテクスト・セティングのデータを収集分析する。そしてこれまでに明らかにした英語の音節配置アルゴリズムの不十分な点について、とりわけイントネーション句の核の位置と新情報・旧情報の区別の取り入れ方について考察し、新たな提案を試みる。音節配置を考察する際にギリシア語・ラテン語における歌詞と音符の対応の知識が必要となるため、今後は音楽史も背景知識として取り入れる。時間軸に沿った強勢配置を記述・分析することで韻律音韻論を介して音声理論の充実に貢献する。
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