研究課題/領域番号 |
24520541
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷口 一美 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (80293992)
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研究分担者 |
深田 智 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (70340891)
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キーワード | 言語習得 / 中間態 / get-passive / 自他交替 / セッティング主語構文 / 移動表現 / 物語理解 |
研究概要 |
本年度は、英語における言語習得に関し CHILDESのデータ等に依拠し分析しそのメカニズムを解明する本研究課題の計画のうち、谷口・深田が前年度より各々担当しているテーマに関する成果の総括に向け、最終的な分析と調査を行った。 谷口は、英語のget-passiveが中間態であるという Alexiadou (2012) らの見方を受け、CHILDESでアメリカ英語話者の子どもの発話からget-passiveを含むものを抽出し、getと共起する過去分詞の種類と年齢による分布、be-passiveと比較しての機能的特性を詳細に分析し、「英語の中間態が他動詞から非対格自動詞への橋渡しを行う役割を果たす」という前年度来の仮説を支持する事実を得た。さらに、自動詞の過去分詞形を含む get-passiveなど大人の文法では許容されないget-passiveの事例が散見されたことから、こどもの文法特有のget-passiveの機能が存在する可能性を示唆し、次年度以降の研究課題とした。 深田は、CHILDESを用いセッティング主語構文(there構文を含む)に関する事例を検索・収集した。しかし子どもの発話にセッティング主語構文が希少であることから、手掛かりを絵本及び児童文学にシフトしセッティング主語構文の事例を収集し、こどもの物語理解に関する認知言語学的な観点から検討を行った。この調査から、セッティング主語構文に関与する移動表現自体を詳細に見る必要性が認められたため、来年度はCHILDESにより詳細に調査することを課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、CHILDESに登録されている膨大な発話データベースを使用した事例収集という研究方法を採っており、実際に子どもの発話に当該事例がどの程度含まれているかにより進捗や成果が大きく左右される。谷口が本年度対象とした get-passiveは、子どもの発話が約1000件、大人の発話が約3000件と膨大に収集されたため予定以上の進展があったが、深田が担当したセッティング主語構文は事例が極めて少なく、CHILDESからのデータ抽出にも方法的な問題が生じたことからやや遅れている。2名の状況を総合的に判断すると、おおむね予定通りの進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は本研究課題の最終年度であるため、谷口・深田の研究成果を総括し、言語習得に関わる認知的メカニズムの一側面を明らかにすることが目的である。 谷口は中間態に対応する事態概念と自他交替の習得に関し成果をまとめると共に、子どもの対話者である大人の発話に着目し、子どもと大人のインタラクションの観点から言語習得の様相を考察する。深田は移動表現(移動動詞 run, go など)を含む事例をCHILDESから収集し、それらの動詞が経路句とどのように共起するか、発達段階ごとに観察すると共に、セッティング主語構文に関しても継続して調査を行う。 2名の研究成果を統合し、さらに発達心理学での言語獲得研究の知見を交え、主要学会でワークショップを開催し議論を深める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
翌年度分として請求する助成金のほか、2012年度・2013年度からの繰越が合計約300,000円生じている。これは、2012年度に研究分担者の深田の出産により研究の進捗に遅れが生じたこと、2013年度に谷口が出席を予定していた欧州での学会の開催時期が翌年度に変更となったため、予定していた旅費の支出が延期されたことによる。 当初の計画に沿った執行に加え、次年度(2014年)は谷口が国内外での学会発表による旅費の支出、深田がコーパスによる事例収集の研究補助への謝金で助成金を中心的に使用する予定である。また、学会ワークショップでの発達心理学研究者の招聘への謝金も計上する予定。
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