研究課題/領域番号 |
24520546
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
永尾 智 香川大学, 教育学部, 准教授 (30294739)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 英語史 / 文法化 / 進行形 / 近代英語 / 認知意味論 / コーパス |
研究概要 |
本研究は、後期近代英語期に一般化した未完了相の文法機能完成経過について、当該文法構造(=いわゆる、進行形)の文法化過程における構文的要因と語彙的要因を、実証的英語史研究眼と認知意味論的アスペクト観とによるコラボレーションによって検討することを目的としている。本研究によって、1)進行形構造を形成する動詞が後期近代英語期に多様化する様相を記述すること、2)後期近代英語期における進行形構造の出現環境を、構文的要因、語彙的要因に分けて整理すること、3)語彙的位置づけから文法的位置づけへと変化する文法化過程を、近代英語から現代英語にかけての期間の中で未完了相システムが完成するまでの到達度として捉え直すこと、4)進行形構造という文法構造が示す英語未完了相の本質的意味を再考する端緒とすることを念頭に置いている。 平成24年度における研究テーマを端的に言えば、「微視的記述法によって見えてくる進行形構造形成要素の整理とコーパス作成」ということができる。これは、実証的英語史研究記述法による先行研究の整理と問題点の抽出、およびコーパス作成の開始ということである。上記の研究目的のうち特に、1)、2)について英語史的観点から精緻化を図ることを目指している。なお、研究対象の進行形構造は、Quirk et al (1985)にもあるように口語性の高い文脈で5%程度の出現率であるため、英語史研究で使用する資料文献での出現率がかなり低く、これだけで形成要素を整理するのは難しい。したがって、25年度の認知意味論的アスペクト観の検討をすすめながら、さらなる精緻化を図っていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究3年計画の初年度にあたる平成24年度における研究テーマは「微視的記述法によって見えてくる進行形構造形成要素の整理とコーパス作成」であり、上記4目標のうち、1)進行形構造を形成する動詞が後期近代英語期に多様化する様相を記述すること、2)後期近代英語期における進行形構造の出現環境を、構文的要因、語彙的要因に分けて整理するという2つの目標を中心課題に設定した。英語史的観点からの先行研究の整理を行った。研究テーマを2つに分けて考えた場合、前半部分についてはほぼ予定通りの進展であるが、後半部については進んでいないため、上記の自己点検結果といえる。 具体的には、Scheffer (1975)、Strang (1982)、Denison (1998)、Rissanen (1999)、末松(2004)の論点整理を図った。いずれも英語史研究であることから明示的表出事項が示される一方で、実証性を重視する研究手法ゆえに表面化しない核心要因に関する検討が行われていないことを再確認した。進行形構造は、Quirk et al (1985)にもあるように口語性の高い文脈で5%程度の出現率であるため、文献資料における出現率がかなり低く、形成要因の整理と明示の段階には至っていない。Strang (1982)が重要視したJane Austen作品をコーパスとする末松(2004)では、当該構造の扱いは小さく、扱いの困難さを示している。25年度の認知意味論的アスペクト観の検討をすすめる中で、さらなる精緻化を図っていく必要がある。また、研究テーマの後半にある「コーパス作成」が進んでいない。最近ヨーロッパで発表された後期近代英語コーパスの利用可能性についても、検討していく必要がある。なお、24年度中に研究報告に至っていないため、25年度以降にまとめて報告していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度における研究テーマは前年度の逆の側面をとらえるため、「巨視的記述法によって見えてくる進行形構造形成要素の整理とコーパス作成」となる。さらに、平成26年度の研究テーマは、24年度と25年度2年間の考察を整理統合することとする。 平成25年度については、上記4目標のうち特に、2)後期近代英語期における進行形構造の出現環境を、構文的要因、語彙的要因に分けて整理すること、4)進行形構造という文法構造が示す英語未完了相の本質的意味を再考する端緒となる考察を進めるという2点を中心に、構文文法論と認知意味論の観点からアプローチする。平成24年度の英語史研究考察から見えてきた「核心要因に関する不分明さ」と形成要素整理の遅れについて、25年度の認知意味論的アスペクト観の検討をすすめる中で、さらなる精緻化を図っていく予定である。また、「コーパス作成」の進め方については、最近ヨーロッパで発表された後期近代英語コーパスの利用可能性についても検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の直接経費は、物品費20万円、旅費10万円の予定である。(平成26年度の内訳もこれと同じとなる。)物品費は全額、図書購入費となる。平成24年度は主に「文法化」、「コーパス言語学」関係図書の購入に充てたことから、平成25年度は対象領域を変えて、「構文文法」、「語彙意味論」、「認知意味論」関係図書の購入に充てる予定である。さらに、平成26年度は、特に「英語史」、「時制論」関係図書の購入に充てる予定である。平成25年度の旅費については、東京大学等での資料収集と国内学会での研究成果発表に充てる予定で、これについても26年度も同様の内訳となる予定である。
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