本研究の目的は、英語の派生語の強勢パターンの分布が、入力(語基)の音節構造の分布と一般的な音韻制約の階乗類型 (factorial typology) からどの程度可能であるか、を考察することにある。本年度は、実際の分布についての量的調査を行うため、筆者が以前行っていた研究(「英語接尾辞のクラス性と強勢付与に関する記述調査と部分配列理論による分析(課題番号:21520513)」)で作成した英語の強勢に関するデータベースをもとにして、それぞれの語彙の語基の情報を拡充する作業を中心的に行った。具体的には、個々の派生語の語基の音節構造と強勢パターンのデータについて、アルバイトを雇って入力作業を行った。その結果、総計26000語以上の語彙について入力作業をほぼ完了させることができた。これにより英語の派生語における強勢パターンと音節構造の分布の計量的な調査が可能になるが、今後はその精度を高めるため、入力したデータのチェックを行う必要がある。 一方、理論的な考察を行う際に生じた派生的な問題として、制約の局所結合 (local conjunction) に関する理論的な考察を、東北大学の菊池清一郎氏と共同で行った。本研究の前提として制約が個別に順序付けされた際の階乗類型を仮定しているが、制約が局所的に結合されている場合にはまた別の類型が生じる可能性があるからである。この考察の結果は、後述の「雑誌論文」欄に記載の論文として発表された。 また、昨年度出版した本研究の成果を含む著書が、第48回市河賞(語学教育研究所)および2014年度日本英語学会賞(著書)を受賞した。
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