研究課題/領域番号 |
24520554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
長谷川 宏 専修大学, 法学部, 教授 (90208497)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再帰代名詞 |
研究概要 |
(1) 映画・ドラマ等のDVDソフトウェアから得られる字幕・音声データを再帰代名詞および再帰的要素(self-)を含む派生合語のデータベースを独自に作成した。併せて字幕情報を含むインターネット上の動画等からも再帰的要素を含む言語データ収集を行って、これをデータベースに追加した。 (2) 作成したデータベースから再帰代名詞、および再帰的要素self-を含む複合名詞・動詞・形容詞等の用例を、ノートパソコン、コンピュータ・ソフトウェアを用いて検索し、用法・構文などに応じて整理した。 (3) 整理したデータにおける再帰的要素(self-)を含む派生複合語の用例の数・出現の頻度を、名詞・動詞・形容詞等の品詞ごとに算出し比較した。 4)これらのデータから、語彙部門(lexicon)における再帰的要素(self-)を含む派生複合語の品詞別に見た用例数・出現頻度と、統語部門(syntax)における再帰代名詞の主要部付加の可能性との関連性・相関性について考察した。再帰代名詞(のself部分)が統語部門において動詞・名詞には付加するが形容詞には付加しないとする混成分析を、語彙部門の派生複合語のデータ・分析から裏付ける可能性を検討した。 (5)また、言語学関係資料からこれまでに蓄積された再帰代名詞および派生複合語に関するデータ・従来の分析を参照し、混成分析との比較・検討を通してその有効性を実証する可能性について考察を行った。 (6)平成24年8月にオーストリア・ハンガリーに渡航し、James Merchant教授、Shinichiro Ishihara講師とアポイントメントを取ってコメント・データをいただくなど、海外の言語研究者からの提供データ・コメント・フィードバックを今後の研究に反映させるとともに、国内では得られないデータ・資料の追加収集を海外で行い、データベースを補充した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績のうち、(1)の再帰的要素のデータ収集・データベースの作成、および(2)のデータベースを用いた用例の検索と用法・構文等に応じた整理、(3)の用例の数・出現頻度の算出については、比較的順調に進んでいる。 (4)で述べた、再帰的要素の用例数・出現頻度と、統語部門における再帰代名詞の主要部付加の可能性との関連性・相関性についての考察、混成分析を語彙部門の派生複合語のデータ・分析から裏付ける可能性については、まだ結論を得るには至っていないものの、現在順調に検討を進めている。 (5)については、再帰代名詞および派生複合語に関する従来のデータ・分析を参照し、混成分析との比較・検討を通してその有効性を実証できる見通しをもって考察を行っている。 (6)の海外渡航に関しては、オーストリアにおいて再帰的要素に関するデータ収集を行うとともに、ハンガリーではMerchant教授・Ishihara講師から貴重なコメント・データの提供を受けることができ、今後の研究の進展に向けて得るところが非常に大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)オランダ語等他言語の再帰代名詞および再帰的要素を含む派生複合語のデータを、多言語字幕データを含むDVDソフトウェア等から収集し、ノートパソコン等を用いて、データを英語以外の言語にまで拡張した独自の多言語データベースを作成する。 (2)ノートパソコン等を用いてデータベース内の再帰代名詞および再帰的派生複合語の用例を品詞・用法・構文等に応じて整理し、用例数・出現頻度等を算出し比較する。これらのデータを元に、英語以外の諸言語における再帰代名詞や再帰的意味を持つ派生複合語に混成分析を応用して、その発展性を実証する。 (3)具体的には、英語の再帰代名詞と興味深い異同を示すオランダ語のzichとzichzelfのような諸言語の再帰的要素の統語的性質が、移動または一致のみを用いる分析に依拠するよりも、混成分析を採用した方がうまく説明できることを論ずる。 (4)またオランダ語等英語以外の言語でも、語彙部門における再帰的要素を含む派生複合語の性質と、統語部門における再帰代名詞の性質との間に、関連性・相関性が観察されることを示す。作成した多言語データベースを元に、混成分析を応用して、この関連性・相関性に理論的な説明を与える。 (5)本研究で得られた英語および他の言語の再帰代名詞および派生複合語のデータとそれを説明する混成分析を、今までの言語学関係図書・資料から得られる英語および他の言語の再帰代名詞や再帰的派生複合語に関するデータ、分析と照らし合わせて考察し、その妥当性・有効性についてさらに論証を進める。 (6) 国内外の学会に参加し、研究経過の中間報告とそれに関する意見交換を行うとともに、海外の言語研究者からのコメント・フィードバックを得て研究をより深める。英語および他の言語のデータ・資料の収集を海外で行い、再帰代名詞および派生複合語のデータベースを一層充実させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の多言語データベースの作成に必要な、DVDソフトウェア・コンピュータ関連用品等の購入に250,000円の支出を予定している。また、海外に渡航しデータ・資料収集を行うとともに、海外の研究者との意見交換を行い、コメント・フィードバックを得て研究をさらに深めるため、旅費に350,000円の支出を予定している。
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