研究概要 |
動詞の構文交替現象は、この30年間にわたり語彙意味論研究の中心テーマで、これまで詳細に動詞意味の分析がなされ、意味の統語レベルの写像という観点から、交替現象に関して多くの成果が得られた(Bresnan and Kanerva 1989, Levin and Rappaport 1991, 1995, Hale and Keyser 2002, Reinhart 2002, Borer 2005)。他方、形容詞構文に見られる構文交替は動詞に比して研究が不十分で、動詞・形容詞にインバランスがある。本研究は、これを是正するという観点から、W類の形容詞の語彙意味を調べ、そのユニークな交替を説明しようとするものである。本年度は以下の評価形容詞構文の交替現象を扱った。 (1) a. John was clever/mean to punish the dog./b. It was clever/mean of John to punish the dog. この交替には語彙的な受動化が関わっていることが主張された。 関連する構文で、(2a,b)には明らかに受動化が関わっている。(2) a. Alex did wisely to roll the hose back onto the dock./b. It was wisely done of Alex to roll the hose back onto the dock. 本研究は、この分析が(1a,b)にも適用すると考える。(1a)が能動文で(1b)がその受動版である。事実of Johnの代わりにby John(典型的な受動マーカー)が用いられることも可能である。この分析から他の様々な帰結がえられることも示された。述語の態特性のタイプシフトは、新しいアプローチで、今後いろいろな構文交替に応用できる。
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