研究課題/領域番号 |
24520555
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
丸田 忠雄 東京理科大学, 理学部, 教授 (10115074)
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キーワード | tough / voice / raising / adjective / lexical semantics |
研究概要 |
平成25年度については、(1) Short love poems are easy to be read and understood.のような、補部が受け身で主語が繰り上げられた破格のtough構文について詳細な意味分析を施し一定の解決案を得た。Easyを代表とするtough類形容詞は多義であり、それぞれに応じた統語的具現があるという語彙意味論のアプローチをとった。(1)は、(2) Short love poems are easy to read and understand.のような標準的なtough構文に現れる形容詞とは意味が異なり、これが(1)のようなpassive tough-infinitiveを引き起こしていることを明らかにした。 もっと言うと、tough類の態(voice)が重要にかかわっていることを突き止めた。例えば、(3) Your car is ready to be picked up.でready は"made ready, ready to be used"という意味をもちvoice = passiveとなる(Fischer, et al. 2001: 231)。このような場合に不定詞補部は受け身となる。(1)にも同じメカニズムが働き、passive infinitiveを実現している。すなわち、passiveというvoice valueをもつ述語は、法助動詞と同様voice neutralの振る舞いを示すことができるようになり、受動従節の主語を主節主語位置に繰り上げることができるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Short love poems are easy to be read and understood.のような、補部が受け身で主語が繰り上げられた破格のtough構文について、従来は非ネイティブ話者の誤りであろうとする説もあったが、実際にはこの種の構文が特に現代米語で標準的に用いられるようになってきている。したがってなぜこのような現象が起こっているのかを合理的に説明する必要があった。本研究では、語彙的なvoice valueを仮定することにより、また語彙意味論の仮説を援用することにより、アドホックでない説明理論を得ることができた。また形容詞語彙意味論全体への波及効果も大きく、従来説を見直す重要な手がかりを提供できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、動詞に偏っていた語彙意味論から、形容詞語彙意味論への可能性をさらに探っていきたい。具体的には、語彙的なヴォイスを仮定することで、voice neutralな現象を包括的にとらえてみることができる。受け身文のvoice neutralityには段階があり、modalsがもっとも透明性が高く、次いでneedやdeserveのような動詞、ついでtoughやnecessaryのような形容詞が続く。本企画で扱うtough類は、他のクラスの形容詞と新たなグルーピングをなすことを示し、形容詞意味論の新たな地平を切り開きたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は海外出張の予定が立たず繰り越しが生じた。 今年度は海外出張(カナダ)を予定しており、外国旅費への支出にあてる。
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