研究実績の概要 |
Levin and Rappaport (1995)により提唱された語彙意味論仮説(動詞の意味が統語構造を決定するとする)に基づき、これを形容詞にも拡張して、形容詞の語彙意味から特有の形容詞構文を分析した。具体的には、This book is easy to be read.のような伝統文法からは破格のtough構文を取り上げ、この構文を導くeasy類の意味を明らかにした。これらの形容詞には、easy to read=readableの同義性から窺えるように受動態の意味が含まれており、それが不定詞句の受動態を引き起こしているということである。そうすると、tiugh類形容詞以外でも受動性を含む形容詞について、不定詞補文の態が受動である構文が予測できるが、予測通りnecessary, desirable, preferrableなどの形容詞でも受動不定詞が見られた。また、fit, ready(Your room is not fit to be seen.)などにもみられる。したがって、主となる述語の語彙的態が不定詞補文の態性を決定していると言える。動詞についての、This book nees to be read.のような文にも明らかである。 本研究の大きな成果としては、従来、態(voice)は文法範疇の問題として論じられてきたが、語彙意味の一部を形成しているという、いわゆる語彙的態の観点から諸構文が分析できるという新たな視点を提示したことである。さらに英語の中間構文やI feel cold.<-->The air deels cold.など文法範疇としての態を含まない現象にも応用できるであろう。
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