本研究の目的は、前置詞句をその構成要素に含む文法構文の歴史的発達の実態について、その社会的、文化的、および文献学的な背景も考慮しながら調査し、その歴史的発達過程を、認知言語学において広く採用されているもののこれまでは通時的言語変化の説明理論として応用されることの少なかった構文文法理論の観点から説明することにより、歴史言語学における言語変化を扱う理論に対する実証的かつ理論的な貢献を図ることである。 本研究は、前置詞を含む文法構文の歴史的発達に関する実証研究と、構文文法理論に基づく理論的考察に大別され、今年度は、昨年度から継続しているway構文の研究結果を論文にまとめつつ、例えばHe shot at the target.のようないわゆる動能構文の歴史的発達について、Early English Books Onlineや近代英語期に刊行された英語辞書、英文法書なども用いて調査を行い、古英語期以降の前置詞句構文の発達と関連づけて、認知言語学的な特徴づけを行った。 今年度に公表した研究内容は、 日本英語学会第32回大会シンポジウム「言語変化に対する多角的アプローチ」の講師の1人として、「認知言語学の視点からの通時的言語変化」という題目で研究発表をしたほか、way構文の近現代アメリカ英語における発達を扱った論文が『アカデミア(文学・語学編)』98号(南山学会)に掲載される予定である。 本研究課題が行った研究内容のうち、way構文や動能構文の初期の発達を古英語期の前置詞構文の認知的特徴を踏まえて考察することや、それらを大規模電子コ-パスを用いて考察することは、これまでの研究にはなかったものであり、意義のあるものであると考える。
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