研究課題/領域番号 |
24520559
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
稲木 昭子 追手門学院大学, 国際教養学部, 教授 (50151577)
|
研究分担者 |
沖田 知子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (50127205)
堀田 知子 龍谷大学, 社会学部, 教授 (90209255)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 情報操作のデザイン / トリックのレトリック / 新しい文体論の質的・量的研究 / 推理小説 |
研究概要 |
本申請研究「情報操作のデザイン:理論と実証」は、英語における情報操作に焦点を当て、そこに隠されたトリックのレトリック(誤誘導、誘導、織込みなど)を解明することにより、ことばの仕組みと働きの考究を行うものである。 平成24年度は、書きことばの代表として推理小説における情報操作の言語学的分析およびスモールコーパス作成と分析を行った。研究代表者稲木は、アガサ・クリスティの作品のコーパスを新たに作成し、その言語処理から出てくる人称代名詞の使用箇所を表すプロット表示から推理作家のフェアネスが担保されている点を明らかにし、さらにこの論文も含めて『謎解きのことば学』を上梓した。分担者堀田は、フィクションにおける出来事は生起した順序で語られるわけではなく、物語世界の出来事の中から提示する情報を取捨選択し、それをいつ、どのように提示するかにより、読者の心理的反応は異なる点に着目した。そのような心理的反応の中からサプライズを取り上げ、サスペンスなどと比較しながら、その構造やそれが生じるメカニズムを考察した。また分担者沖田は、近年の文体論と物語論における「テクスト内の言語的特徴」から「テクストをとりまく認知的語用論的特徴」への展開をふまえ、語りのデザインと解釈の関係について考察した。とりわけ、推理小説の情報操作における語り方や情報の出し方などに着目し分析した。また、各自が蓄積してきた情報操作の例をデータベース化し、キーワードによる分類を行った。 以上のように、質的研究による意味面の精査に、テクストを重視した量的研究による形式面の精査を補助的に行い、より精密化を図った。研究の射程を、多くの可能性の中から特定の言語表現が選択されるまでの過程、すなわち言語使用者の意図や被伝達者が行うであろう推論を含めた情報デザインにまで拡大し、情報操作に関する広範な意味論的・語用論的枠組みを構築したと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究は、ことばによる情報操作に焦点を当て、隠されたトリックのレトリックを解明することにより、その仕組みと働きの追究を行うものである。当初の計画の通りに、対象データのケーススタディを重ねることにより新たな融合研究の可能性の探求を進めた。平成24年度に計画していた研究は、研究代表者と分担研究者が連携しつつ、ケーススタディとして書きことば(推理小説)の言語学的分析と、実証研究としてスモールコーパス作成と分析であった。その成果を3つの論文と1冊の著書で公刊し、また一部はウェブ上で公開したので、研究は概ね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の書きことばによるケーススタディを受けて、平成25年度は<演説における情報操作の言語学的分析・スモールコーパス作成と分析>を推進する。誘導による情報操作ということで、口語資料としての演説を取り上げるが、演説は多くの場合、あらかじめ用意あるいは構想されており、それだけにその効果をあげるために言語情報のデザインは強く意識されたものとなる。たとえば、アメリカのオバマ大統領の演説の特徴的なことば遣いや構成を分析すると、意識的にいくつかのキーワードや変奏表現を多用してイメージを増幅させたり、代名詞の有標的な使用により聴衆の巻き込みやときには対立関係を顕わにしたりすることにより、聴衆を誘導していることが分かる。同時に、演説におけるこれらの特徴をふまえ、質的分析を行い、実際にどのような形で言語情報を操作し、そこからイメージをデザインしているのかという点を分析する。また、特徴的な比喩表現の役割についても解明を行い、分析を深化させる。 このような、ある意図をもった演説における言語情報のデザインを解明するために、さまざまな人物の演説をデータベース化して、その全容を捉えることをめざす。 平成26年度は<メディア報道における情報操作の言語学的分析・スモールコーパス作成と分析>へと射程を拡大していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
口語資料としてDVDやCDの購入 関係図書、学会参加の旅費等
|