研究課題/領域番号 |
24520563
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
高橋 亜紀子 宮城教育大学, 国際理解教育研究センター, 准教授 (10333767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 読解 / プロセス / 困難 / 要因 |
研究実績の概要 |
日本の大学や大学院で学ぶ留学生にとって、読解は重要なスキルである。レポートや論文を書く、ゼミで発表するなどのために、文献や資料を読み、重要な情報を取捨選択しながら、内容を把握する読解能力が必要である。しかし、日本語の学習時間は限られており、実践的な読解指導は十分に行われていないのが現状である。そのため、学習者が自律的に読む力を養成する指導法の確立が急務である。 読解の指導方法や教材開発は進んできているが、学習者がどこで、何に、どのようにつまずいているかという根本的な原因は明らかにされていない。読解には様々な要因が深く関係しあっており、これらの要因がどのように文章理解と関わるのかに解明されていない。そこで、本研究では、日本語学習者が遭遇する読解の困難点と、それらがどのような要因で構成されているのかを詳細に調査し、分析したうえでモデル化することを目的としている。 平成26年度は、文章構造に焦点を当てて、口頭及び筆記による再生実験の再分析と新たな実験を実施した。 口頭による再生実験の結論として、中級・上級学習者ともに重要な情報は選べるが、情報間の関連付けについては、中級学習者は、詳細な情報から上位の情報への統合が困難であることが分かった。筆記再生による再生実験の再分析からは、学習者は詳細な情報は十分に理解でき、それを記憶として留めておくことができること、最も重要な情報であれば把握することができることが分かった。しかし、詳細な情報をまとめて上位の情報へと統合していくこと、重要度を重みづけして階層を作ること、つまり、マクロ構造の構築過程で困難を抱えていることが分かった。文章構造を図式化する実験では、上級学習者は文章中の重要な情報とそれ以外の情報とを選別して重要な情報のみを図に示す傾向、中級学習者には、重要な情報が選択できないなどの傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、日本語学習者が遭遇する読解の問題点とその要因を調べている。母語話者、上級、中上級の学習者に対する調査はほぼ実施できたが、中級の学習者が抱える問題点についてはまだ十分には調査できていない。そこで、3月中旬に「中級学習者を対象とする問題点の調査」を、実施した。この調査では、中級学習者5名を対象として、10種類のテキストを読んでもらい、どこでつまずくのかを実証的にインタビュー調査等も含めて、細かく調査を行った。現在、その分析に時間がかかっている。この結果をもとに、次の調査の準備をする必要があるため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に行った中級学習者を対象とする問題点の調査の分析結果を踏まえ、中級学習者を対象とした実験を行う予定である。その結果を含めて、中級~上級の学習者の読解の問題点と、それらの要因についてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データを収集する回数が十分確保できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度のため、データの整理・収集・分析に謝金が発生する見込みである。
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