本研究の最終目標は、教師が傍らについていなくても、日本語学習者同士で効果的にグループ練習が行えるような、漢字学習教材を開発することである。本研究では、グループ練習中の学習者間のやりとり、および、学習者の習得状況を観察することによって、活動を活性化させるために何が必要か、そして、グループ練習でどのような学習効果が見られるのかを調べた。 平成25年度までの研究において、特に漢字の読みや意味において、学習者同士で知識を共有したり、相手の反応から自身の間違いに気づいたりといったグループ練習の利点が確認された。この結果を受けて、最終年度は、学習者間でどのような質問がなされ、また、どのような間違いに対して指摘がなされているか、そして、それらについてどの程度適切に修正がなされているのかを調べた。 その結果、質問の発話については、同じグループのメンバーから適切に返答がなされているものが大半を占めたが、間違いの発話については間違いに気づかないままのものや返答がなされていないものが多いことがわかった。中でも修正なしが目立ったのが、漢字・漢字語の読みである。修正なしのままとなるのは、特に清音と濁音、長音と清音などの類似音で、一般的に日本語学習者が区別を苦手とするもの、そして、グループ練習を進める上での重要性が低い語の場合が多かった。 この結果は、漢字学習用教材を開発していく上で有用な知見になると思われる。今後はさらに分析を進め、修正なしの漢字・漢字語の読みについて、教材を工夫することによりグループ練習の中で修正が可能なものと、学習者同士では修正が困難なものとに分別する予定である。そして、より効果的なグループ練習を行えるような教材の開発へとつなげたい。
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