研究課題/領域番号 |
24520580
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
アプドゥハン 恭子 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00184630)
|
キーワード | 日本語教育 / 異文化間協働能力 / ビジネス日本語教育 / インタビュー調査 |
研究概要 |
24年度の成果発表として、大手企業の開発部門で働く技術総合職4年目の元留学生の適応と違和感の認識について異文化適応の観点から分析してポスター発表を行い、来場者との意見交換を行った。試作した教材についても来場者の意見を収集した。 25年度は、企業で働く工学系元留学生の異文化間協働能力について、昨年の調査対象の国内の中国人元留学生とは背景の異なる、インドネシアの日系企業で働く7~14年目の元留学生4名を調査対象とし、個別インタビュー、異文化意識についてのグループインタビュー、上司への聞き取りなどを行った。国内では、海外に進出しようとしている国内企業に勤める就職4年目の元留学生(ベトナム)について、これまで感じていた違和感に関する追跡調査を行うと共に、適応力があると思われる国内の大企業勤務2年目(ラオス)に対してその意識を調査した。また、昨年度グループ活動を行った大企業1年目の社会人(中国)に対してグループ活動による意識の変化を中心に尋ねた。また、近年増えつつある非漢字圏出身の国内企業就職内定者(アルジェリア)に、日本語能力の自己評価や日本企業文化に対する就職前の意識を探るための聞き取り調査を行った。 以上の調査により、これまで大まかに描いていた日本企業に入社したときの違和感やそれに対するストラテジーなどについて、より大きな枠組みが得られた。また、適応の経年変化、その元となる経験とストラテジーについていくつかの示唆を得た。非漢字圏出身の内定者の意識からは、就職活動期間の企業担当者との接触や先輩留学生のアドバイスから日本語能力を自己評価して学習方略を考案していく様子が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にはなかったが、海外の日系企業で7~14年間働く元留学生3名とその上司に対して調査を行い、勤務の様子や日系企業で働く際の意識などを、個別にもグループインタビューの形でも収集することができた。これにより、異文化間協働に関わるストラテジーについてこれまでより大きな枠組みが得られた。 その他、昨年度のグループ活動による意識の変化を調べるための調査や経年観察など、着実に調査を行った。 また、近年増加しつつある非漢字圏出身の国内企業内定者に、日本企業文化に対する意識など調査して、新たな指針を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度として、これまでの調査をまとめて分析し成果発表を行う。適応していても違和感を持ち続けている事例など、異文化適応や職場適応の面から分析を行う。これまでの文献調査なども考慮に入れしつつ、異文化協働のためのストラテジーを大きく概観して、背景や日本語能力などの違いがあっても留学生に意識のきっかけを与えるための分かりやすい見取り図を描く。また、内定者に対して意識化を促すような教材を再度試行して完成させ、HP上で公表する。そして、今後の研究への方向性を考察する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
年度末にインタビュー調査を行ったため、その部分の書き起こしのための謝金などが次年度に繰り越されてしまったため。 最終年度として、これまでの調査を分析して、異文化協働のためのストラテジーについてその全体像と個々のストラテジーを関連付ける考察を行い、その成果を発表する。また、試作していた教材を拡充し、公表する。費用としては、最終的な文献調査のための関連書籍、調査結果書き起こしのための謝金、成果公表のための旅費、試作教材整理のための謝金、ウェブ上で教材を公表するためのHPサイト作成謝金などである。
|