研究課題/領域番号 |
24520582
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
山下 暁美 明海大学, 外国語学部, 教授 (10245029)
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研究分担者 |
井上 史雄 国立国語研究所, 20, その他 (40011332)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本語 / 緊急時コミュニケーション / 災害 / 命綱 / 東日本大震災 / 地域住民 |
研究概要 |
命綱としての日本語つまり、緊急時や災害時のコミュニケーションに必要な用語について、外国人がやさしく言いかえた日本語の特徴を明らかにした。さらに「やさしい日本語」について必要条件を分析した。平成24年度では岩手県、宮城県、福島県で在日外国人を対象に面接調査を実施した。 調査協力者は、福島県(11名)、宮城県(14名)、岩手県(23名)で合計48名(男性12名、女性36名)であった。出身地は、中国(50.0%) 、アメリカ(18.8%)、フィリピン(10.4%)、韓国(8.3%)、カナダ(4.2%)、台湾(2.1%)、オーストラリア(2.1%)、ニュージーランド(2.1%)、チリ(2.0%)で、日系人を除けば、国内の外国人の出身地の割合と大きくは変わらない。母語別では、母語が2言語の人も含まれていたが、中国語(52.1%)、英語(18.8%)、ハングル(16.7%)、タガログ語(10.4%)、スペイン語(6.3%)、フランス語(2.1%)、オランダ語(2.1%)の順となった。居住地は、沿岸部、内陸部の18都市であった(須賀川市・田村市・郡山市・福島市・白河市・岩瀬郡・南相馬市、塩竈市・仙台市・柴田郡・岩沼市、大船渡市・陸前高田市・北上市・花巻市・盛岡市・宮古市・釜石市)。 研究成果は学会発表「災害時のやさしい日本語再考」(東呉大学日本語文学系創系40周年記念 2012年日語教学国際会議(2012年4月28日)で結果を明らかにすると同時に大会手冊pp.1-13)で論文にした。また、「災害時の日本語-東北3県における調査結果をもとに-」(文化庁東日本大震災において危機的状況が危惧される方言の実態に関する調査研究事業(岩手県)報告書2013.3.)の報告書(pp.291-310)で結果を公開した。Web上でも見ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの達成度は約50%である。予備調査として東日本大震災発生の6ヶ月後に行なった東京都、千葉県、神奈川県についてデータの整理を行った。平成24年度の本調査では東北3県(岩手県、宮城県、福島県)に在住の外国人に面接調査を行い、データ入力および分析考察を行った。 しかし、調査協力者の対象となる外国人は、原則的に日本語で質問に答えられる人で、災害時に必要と考えられる日本語を漢字仮名まじりで読める人を対象としたため外国人を探すのに時間がかかり人数を十分な数を確保できなかった。地域的な偏りも見られる。今年度は補充調査が必要である。 面接調査では、震災発生時に外国人がどのような状況におかれ、どんな行動をとったかについて直接情報を得ることができた。語彙と表現の項目は、現象関連項目(15)、健康関連用語(11)、事後行動関連用語(24)、環境関連用語(20)、その他(地域・地形に左右される語彙)合計77項目であった。災害時に「たいへん重要なことばでもっとも必要なことばである」(3点)、「まあまあ重要なことばでありまあまあ必要なことばである」(2点)、「どちらとも言えない」(1点)、「重要なことばではないし、必要なことばでもない」(0点)、「わからない」(カウントしない)のように重要度順に点数を与えて集計したが、地域差が大きく反映し、データ数も不足していると思われる。調査時の録音を文字化する作業については、情報収集が一段落し集計結果が出た時点で方針を再考する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査の分析結果を振り返って調査協力者に地域的な偏りが見られること、データ数が少ないことが問題点となっている。今後、東日本大震災が襲った太平洋岸を中心にさらに茨城県などを加え、調査地の拡大とデータ数の確保を考えながら調査を進める。茨城県については、すでに調査協力の依頼等を開始している。外国人の面接調査を通して、日本人の意見も聞くべきであるといった意見、言語関連以外の貴重な情報などが寄せられた。これらの情報や意見をもう一度検討し、日本人にも同様の調査を行うべきかどうかについて検討する。 平成24年度の調査結果によって「たいへん重要なことばでもっとも必要なことばである」、「まあまあ重要なことばでありまあまあ必要なことばである」、「どちらとも言えない」、「重要なことばではないし、必要なことばでもない」、「わからない」のように重要度を点数化して計量した。また、理解度についても「たいへん重要」「まあまあ重要」「あまり重要でない」「重要でない」「わからない」を点数化した。両項目をかけあわせ「理解度が高く重要度も高い語彙」「理解度は高いが重要度が低い語彙」「理解度が低いが重要度は高い語彙」「理解度が低く、重要度も低い語彙」の4つにグループ分けした。そして、「理解度が低いが重要度は高い語彙」について、日本語教育等で重点的に導入すべきこと、携帯型緊急時用語カードの作成を提唱したいと考えている。これらの実現について公共機関や研究機関の理解と協力が必要であるので広く問題理解への意識的に働きかけをしていく予定である。日本語教育教材への応用ではどのような方法がふさわしいか検討する必要がある。 地方自治体等とも情報を共有して相互の協力体制をどのように構築するのがよいのかを探っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は補充調査実施のための交通費、滞在費、調査員の人件費等が必要になる。物品費は、データ入力作業に必要なのでノートパソコンを購入する(レッツノート200,000円)。交通費は、補充調査のためのもので福島、宮城、岩手が含まれ、新しく今年度調査地となる茨城への往復旅費も必要となる(岩手・宮城・福島・茨城調査旅費一人70,000円×4人分=280,000円)。また、海外の学会発表を予定している(300,000円)。人件費・謝金は海外での発表のため英訳のネイティブチェック料である(70,000円)。データ入力、資料整理、アンケートの配布・回収等(130,000円)、その他印刷費、通信費、会議費に20,000円を計上している。以上は研究代表者、分担者、連携研究者が必要に応じて相談の上、使用する経費である。
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