研究課題/領域番号 |
24520583
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
鈴木 伸子 神田外語大学, 留学生別科, 講師 (40507620)
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研究分担者 |
柳川 悦子 東洋大学, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (70626499)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 外国人社員 |
研究概要 |
本研究は、平成24年から26年に及ぶもので、当該年度は、研究初年度にあたる。そのため、この年度の研究実施計画上の目的は、研究に着手するための準備とデータ収集にある。 本研究がインタビューで聞き取るデータは、外国人社員が職場で直面する問題点や仕事上のやりがい・人間関係・キャリア形成など、個人情報の範疇に踏み込む性質のものであるため、研究倫理には十分に配慮する必要がある。そのため、まずは所属先の研究倫理審査委員会の承認を得るだけではなく、質問リストの作成について分担者とともに検討を重ね、申請前に実施したパイロットスタディ以上に精緻なリストを作成した。 その後、入社2~3年目の外国人社員を中心に協力者を募り、アポイントをとって合計8名のインタビューを実施した。この8名は、ベトナム・中国・台湾の出身で、いずれも日本の大学・大学院を卒業した20代半ばの若者である。滞日歴は4~8年と比較的長く、高度な日本語力を武器に観光関連を中心とする大手企業に採用されて働いている。これまでのインタビュー調査の結果、若手の外国人社員には、勤務に関して強い不満を持つケースと比較的良好なケースの2グループに大きく分かれる傾向が見られることが分かった。前者の場合、大きな組織を持ちながら、昇格や評価のシステムやキャリアパスが不透明という、日本の大手企業の特徴が影響を与えていると思われる。一方、満足度の高いグループの場合、勤務先が中小企業で、自分のポジションが経営者に直結しており、高度な新規事業への取り組みをいきなり任される、という傾向が見られた。外国人社員の採用に意欲的な企業が増える昨今、今後の日本企業の人事システムの改善に有益な知見を提供しうるデータが収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の柱となる二つの研究は連続するものであり、まず初めに、15件ほどの外国人社員へのインタビュー調査を先行して実施し、そのデータ収集から得られた知見をもとに、日本企業の人事採用担当者へのインタビュー調査を開始する計画であった。 そのうち、本年度実施を予定していた外国人社員へのインタビュー調査は、入社1~3年目の若手社員を対象にするものである。しかし、入社直後の新入社員は新人研修や販売実習などで配属先が安定せず、アポイントをとることが難しかったため、2~3年目の社員を中心に聞き取りを行った。その結果、8名のインタビューは終了したが、入社一年目社員のデータ収集を次年度に持ち越すこととなった。そのため、第一の研究のデータ分析が完了せず、第二の企業の人事部採用担当への研究に着手する時期が多少遅れた。 しかし、外国人社員と企業の人事採用担当のいずれも、研究代表者と研究分担者はインタビュー対象者に協力を得るための強いネットワークがあるため、適切なインタビュイーを探すための労力はかからない。今後の集中的なデータ収集により、当該年度の遅れを取り戻すことは十分可能と考える。また、年度末のため、経費支出が25年度分として計上され、本年度評価の対象とはならなかったが、25年3月には、研究分担者の手がけるデータ収集が4件ほど終了しており、新年度にも具体的なインタビューの予定が入っている。従って、第二の研究におけるデータ収集も、本年度前半に完了する見通しは立っている。
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今後の研究の推進方策 |
入社初年度の外国人社員も、二年目を迎えて所属先での業務も安定してきたので、このタイミングで集中的にインタビューデータを収集する。また、これまでのインタビュー対象者は、中国・台湾・ベトナム出身者のみだったが、今後は、タイやマレーシア、シンガポールなどの東南アジア出身者もしくは非漢字圏出身者へもインタビュー対象者を拡大する。こちらのデータ収集に関しては、研究代表者の鈴木が主に担当する。 一方、企業の人事担当者へのインタビュー調査は、観光関連企業のうち、ホテル・旅行代理店・物流などの具体的な企業に勤務する各担当者への研究協力は既に取り付けている。そこで今後は、集中的にインタビューを実施する予定である。こちらは、研究分担者の柳川が主に担当する。 さらに今年度は、こうして収集したデータをふまえて分析を行い、ワークショップを開催する予定となっている。日程は今年度後半となる予定だが、調査に協力した外国人社員および企業の人事採用担当者の複数名に、参加を依頼している。ワークショップの開催後は、報告書の作成およびウェブサイトの公開を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
主な用途としては、2つ挙げられる。まずは、データ収集とその後のデータ加工に伴う費用である。具体的には、情報提供者の勤務先へ赴く旅費・インタビュー協力の謝金・音声データ文字化の外注費である。旅費はこれまで都内が中心であったが、本年度は北関東・軽井沢等の遠隔地に働く情報提供者のもとへ赴く予定がある。また、謝金については、若手社会人は一律2000円を支払うが、企業の人事担当者の場合は職位に応じて5000円~を支払う。 今年度の研究費における第二の用途としては、ワークショップの開催とその後の研究成果公開である。ワークショップは年度の後半に研究分担者の所属先大学(東洋大学)で開催する。開催にあたっては、複数名の外国人社員と企業の人事担当者を招聘する予定で、そのための旅費・謝金が必要となる。また、開催後には報告書を作成して関係機関に送付するため、そのための印刷代・送料を見込んでいる。併せて、ウェブサイトの開設と公開も予定しているため、この作業にあたるアルバイトの人件費も計上した。その他、キャリア教育や人事関連の専門書の購入と、PC関連の消耗品の購入も予定している。
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