研究課題/領域番号 |
24520583
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 伸子 早稲田大学, 付置研究所, 准教授 (40507620)
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研究分担者 |
柳川 悦子 東洋大学, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (70626499)
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キーワード | 外国人社員 / キャリア教育 / 異文化間教育 / 留学生 |
研究概要 |
本研究は、日本の大学を卒業し文系総合職として日本企業に入社した外国人社員が離職に向かう背景もしくは逆に定着する理由を明らかにすることが目標である(平成24年~26年)。そのために、当事者である若手外国人社員と日本企業の人事採用担当者の双方に向けて聞き取り調査を行う。前者(外国人社員)に対しては、日本企業で彼らが直面する新入社員研修やOJTなどの人材育成システムに対する感想・入社前後のギャップ・職場環境などを訊く【研究責任者が主に担当】。一方、後者の人々(企業の人事担当者)には、どのような外国人人材を日本企業は採用し、どう育成すべきかを、それぞれ聞き取る【研究分担者が主に担当】。 今年度は、合計9名の外国人社員のデータ収集を行い、前年度とあわせるとインタビューは合計17名となり、15名を目安としていた外国人社員のデータは予定数を越えた。一方、昨年度4件だった人事担当者側のデータは、今年度は3件を加えて合計7件となった。こうして収集したデータは、現在、研究代表者と研究分担者が協働で分析を行っており、途中経過ではあるが、H25年度には二つの学会・研究会(うち一つは国際学会)にて次のような内容の口頭発表を行った。日本で働く外国人社員には、勤務先に強い不満を持つケースと満足度の高いケースの2グループが見られるが、両者に共通するのは成長したい・実力をつけたい、という意欲である。従って、その意欲に応える教育的な関わりや、成長を促す責任ある仕事を与えられることが企業側に求められるが、一部の日本企業では未だに終身雇用制度に則った育成や将来の道筋が見えないOJTを行っており、外国人社員との間にはギャップが生じていることがわかった。今年度は、最終的な分析結果を公表して検討するためのワークショップを開催する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、研究二年目にあたる。当初の研究計画では、平成24年度には主にデータ収集を、25年度にはその分析とその理論化、更に年度末にはそこで得られた知見の公開を行う予定であったが、平成24年度は、東日本大震災発生直後の研究開始となったため、外国人社員の研修や配属スケジュールの変更、人事部内の採用スケジュールの変更等、予想外の事態が発生し、予定した時期にデータ収集を行うことが難しかった。そのため、本格的なデータ収集が25年度にずれ込んだが、外国人社員へのインタビュー調査はほぼ終了し、その分析も、研究代表者・分担者のレベルでは最終段階に入っている。本年度は、人事担当者側のデータ収集と分析を終え次第、ワークショップを開催する。そこでは、外国人社員・人事担当者と分析結果について議論を交わし、結論について検討するとともに、日本における外国人社員の採用・育成の改善に向けた方策を彼らととも探る。
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今後の研究の推進方策 |
人事担当者へのインタビュー調査は、多忙を極める大手企業の管理職が多いため、アポイントがしばしば延期になるが、具体的な研究協力は既に取り付けている。これら3件程度の新規データを加えて、今年度前半までに合計10件程度のデータ収集が終了する予定である。また、これまで研究分担者の柳川が主担当であったが、データ収集のペースを早めるため、研究代表者の鈴木もこのインタビュー調査に積極的に加わることとする。その後、一次分析を終えてワークショップを開催する予定だが(11月ごろを予定/於:東洋大学白山キャンパス)調査に協力した外国人社員および企業の人事採用担当者のうち複数名に既に参加を打診しており、快諾を得ている。当初の計画に比較すると遅れはあるものの、研究課題を推進するための環境は既に整っており、最終的には予定した成果があげられる見込みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ収集が一部遅れ、24年度にずれこんだため、そのための使用を予定していた交通費・謝金が次年度使用分となった。併せて、平成25年度に予定していたワークショップの開催も、データ収集の遅れから最終年度にずれた。 今年度の前半には、残り3件ほどのデータ収集に伴う交通費・謝金と、そのインタビューデータ文字化のための外注費に経費を使用する。後半には、ワークショップの開催のために経費を使用する。具体的には、招聘する参加者(外国人社員と企業の人事担当者)の交通費・謝金、開催に伴う雑費(資料印刷費・通信費)のほか、開催後の報告書作成のための印刷費やその編集作業にあたるアルバイトの人件費などが挙げられる。なお、この報告書は本研究の研究成果として大学をはじめとする関係各機関や企業の人事部へも広く送付する予定であり、そのための送料を見込んでいる。その他、論文執筆の資料として、キャリア教育や人事関連の専門書の購入と、PC関連の消耗品の購入も予定している。
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