本研究の目的は、日本国内の大学を卒業した留学生のうち、日本企業に就職した外国人社員の、組織社会化の初期プロセスを明らかにすることである。研究期間は、平成24年度より三年間で、平成26年度は最終年度にあたる。
初年度は、入社2~3年目の若手社員を対象とするインタビューデータを収集し、二年目には企業の人事担当者のインタビューデータを中心に収集した。本年度は、双方のグループの追加データを収集しつつ、外国人社員10名のデータを中心に、 M-GTAの手法で分析を行って構造モデルを生成した。その結果,入社直後は配属先の環境に応じて「外国人社員としてのギャップ」「大卒の優秀人材としてのギャップ」という二つのカテゴリーが現れ,その後の適応も異なっていた。その差異の背景には,日本企業に特徴的なメンバーシップ型の人事システムと個々の職場の育成・支援体制という環境の違い,そして,日本人と同じ配属や担当業務に対する本人の抵抗感の有無という三点が影響している可能性が示された。即ち、本研究が対象とした外国人社員に関する限り、先行研究が指摘するような日常的な異文化間のコミュニケーションギャップではなく、日本企業の人を中心とする人事管理手法に対する抵抗感の有無が勤務状況を左右する、という結果が出た。この研究成果をまとめた研究論文は、査読の結果、「移民政策研究」第7号に掲載が決定し、鈴木(2015)として印刷中である。
また、以上の知見を踏まえ、平成26年11月には、企業の人事担当者と外国人社員を集めたワークショップを開催し、分析結果に対して双方の意見をお聞きした。この日の記録は、本科研の報告書として冊子にまとめている。
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