平成27年度に実施した研究の概要は、以下の通りである(最終年度)。 1. 【国内における帰国子女教育史の研究】平成24年度から継続して行ってきた文献研究、及び先行研究の分析により、国内における戦後の帰国子女教育についてまとめ、論文として発表した。論文では主に、帰国子女教育開始当時の英語教育がどのようなものであったか、また、どのように変化してきたのかといった歴史的変遷について、いわゆる「パイオニア校」と呼ばれる初等・中等教育機関に焦点を当て、検討を加えた。これにより、子どもたちが海外で身につけた言語を保持・伸長するため、戦後どのような英語教育がなされていたのかが明らかとなった。 2. 【読解力査定の分析】初年度から実施してきた13名の帰国児童に対する読解力査定で得られた言語データを文字化し、分析した。具体的には、(1) 語彙の多様性、構文の複雑さ、正確さについてコーパスソフトを用いて測定を行った。 (2) マクロ的な分析手法であるストーリーグラマー(物語文法)を用いて、帰国児童が物語全体をどのように読み、把握し、その内容を整理し、再構成するかという観点から、物語構成能力の保持・伸長の状況を考察した。 3. 【フィールドワークの分析】調査協力者の家庭を中心に行ったフィールドワークにより得られた情報を質的に分析した。主に、帰国児童を取り巻く言語環境やリテラシー活動、両言語の使用状況や学習状況を分析対象とした。
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