研究課題/領域番号 |
24520597
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研究機関 | 東北文教大学短期大学部 |
研究代表者 |
後藤 典子 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50369295)
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研究分担者 |
澤 恩嬉 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50389699)
三瓶 典子 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (60537760)
齋藤 美穂 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 講師 (70537761)
山上 龍子 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 講師 (90461722)
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キーワード | 地域語教材 / 介護現場 / ポライトネス・ストラテジー / 異文化感 / 中国 / 韓国 |
研究概要 |
地域語は、地域社会の生活にはなくてはならないものであるが、これまで地域社会内での使用に限られ、外国人にとっては必要がないと思われてきた。しかし、介護現場への外国人介護士の参入で、地域語は地域限定の言語とは言えなくなった。一方で地域語はポライトネスや配慮を効果的に表現するツールとしても使用されている。質の高い介護を行うためには、他地域出身者が地域語を正しく理解し良好なコミュニケーションをとる必要が生じている。よりよい理解のための地域語教材開発が本研究の目的である。 今年度は、まず、昨年中国の吉林の介護施設を訪問し依頼してきたアンケート(Brown&Levinsonのポライトネス・ストラテジーの項目に沿って、どのように発話することで配慮を示すかを問うもの)を回収し整理したが、そのデータを元に、インタビュー調査を行った。また、韓国のソウルの介護施設にもアンケートを依頼し承諾を得ていたが、回収することができなかった(依頼した施設側に何度も提出を促したが、なんらかの理由でできなかった)ため、施設を変えて、直接インタビューを試みた。どちらも、現在翻訳作業中である。また、日本人の介護ポライトネスについては、当初は介護を専門とする研究分担者の内省を参考にしようと考えていたが、具体的な発話や場面を把握するために、実際に介護の現場で働く日本人介護士にも同じアンケートを行うことにした。 体の不調・不快を訴える地域語表現については、山形県立中央病院の看護師に行ったアンケート調査とフェイスシートの記述から、山形市内にある病院ではあるが、患者は様々な地域の出身者がおり、山形地域語という山形市内で使用されている地域語という括りでは整理しにくいことが分かった。そこで、方言学で分けられている4つの区分(庄内・最上・村山・置賜)に分け、それぞれの地域出身の看護師に再度アンケートを行い、現在整理中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
介護の異文化感を得るために、中国、韓国の介護施設に協力を依頼したが、それぞれの文化的な問題から、協力を得る方法なども異なり、想定以上に時間を要してしまった。中国については、政府関係者に協力や了承を得る必要があり、インタビューの日程設定なども調整に時間を要した。韓国については、施設を訪問して依頼し了承を得ていたにもかかわらず施設を通じてのアンケート回収には至らなかった。施設を変えて、直接インタビューを行うことにするにも、予定以上の時間がかかってしまった。また、介護ポライトネス・ストラテジーを探るために、Brown&Levinsonのポライトネス・ストラテジーを元にしたアンケートを行ったが、項目の数も多く、負担の大きいものとなり、忙しい介護士に依頼しデータを得ることも想定以上の時間を要する理由の一つとなったかもしれない。また、施設長の承諾を得てアンケート調査をするべく承諾書を渡して依頼すると、それを躊躇する介護士もおり、難しさを感じた。 山形市内で多く使用される地域語については、以前、留学生が接する可能性の高い地域語の教材開発を行った際は、山形の方言区分の中でも村山に限定することで問題はなかったが、介護施設や病院に来る高齢者については、出身地の方言を使用する場合も多く、それぞれの地域語に関する整理も必要だという意見が多く得られ、4地域の方言を収集することに方針を変更したことも遅れの理由となった。
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今後の研究の推進方策 |
介護ポライトネス・ストラテジーを軸とした異文化感については、現在翻訳を行っているインタビューデータと、日本人介護士へのアンケートデータを比較し、同じ配慮を表現するにも異なった方法が母語表現で身についている場合の注意点などを整理したい。 主に理解のための地域語となるが、体の不調・不快を訴える表現については、とりあえずの分類で整理している。「感覚を表す表現」「症状を現す表現」「動作を表す表現」「身体部位の名称」「患者の要求の表現」「医療者の問診や応答の表現」という分類をし、それぞれ山形県の4つの方言区画毎の表現を採集した。現在は、まだとりあえずの分類であるが、それらを外国人が調べたり理解したりする際に使いやすい形を工夫してデータベース化し、教材を試作したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、中国、韓国共に、3名での出張を予定していた。しかし、個人的なことではあるが、複数の予定者の家庭に今年度不幸があり、出張がむずかしくなったため、少ない人数(中国1名、韓国2名)での出張となった。また、成果の中間発表なども、研究がやや遅れていることから、今年度は行わなかったため、旅費が多く未使用となったもの。 成果発表の旅費として、5万円×6名=30万円。アンケートデータに関する追加インタビューと、データ整理のための謝金として13万円。 また、成果発表時に使用する機器(小型ノートパソコン15万円)と、教材を現場で試用するための機器(ipad 5万円×5台=25万円)を購入したいと考えている。
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