研究課題/領域番号 |
24520598
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大妻女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
中尾 桂子 大妻女子大学短期大学部, 国文科, 助教 (20419485)
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研究分担者 |
田中 信之 北陸大学, 留学生別科, 准教授 (80288331)
福岡 寿美子 流通科学大学, 商学部, 教授 (60330487)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / カナダ日本語教育振興会 |
研究概要 |
本研究は,<A>対面方式,非対面方式でのピア・レスポンス2形態,<B>>留学生,日本人学生,留学生と日本人学生混在の3タイプのメンバー,といった<A>「活動形態」と<B>「学習者タイプ」の違いにおける,ピア活動実施後の学生の意識,評価点向上の条件としてあり得る観点と,それらの関係を調べることが目的である。 24年度前期は,3タイプのクラスでの対面式ピア・レスポンス実践と,2タイプの授業での非対面ピア・レスポンスを実践した。前期終了後の8月に,担当者による実践報告会を開催し,前期授業で実施した授業活動が,ピア・レスポンス活動として機能していたか,また,実施した授業形態がどのようなタイプのクラスとなったかについて意見を交換した。報告会と併せて,研究分担者である北陸大学の田中信之氏によるワークショップを開催し,研究分担者間での取り組みや実践に大きな差が生じないよう,ピア・レスポンスに対する理念と実践形態におけるコンセンサスを強化した。 24年度後期は,前期のコースデザインを修正,発展させ,2タイプのクラスで,対面,非対面の授業実践を行った。学期末の25年2月に研究分担者間報告会を開き,実践方法,条件,利点,問題点を考察した。2月は,ピア・レスポンス指導の研究者である原田三千代氏(桜美林大学非常勤講師)を召き,方法と問題点に対する改善方法についてコメントをもらった。 研究代表者は,この他に,文の結束性判断の観点を用いた場合の,コレスポンデンス分析,クラスター分析の有効性を検討し,夏期と学期末の研究会で発表して有識者の意見を求めた。今回は,ピア・レスポンス体験と被体験日本人学生の2タイプのテキストと,ピア・レスポンス体験,被体験留学生の2タイプのテキストと,学生がアカデミック・ライティング指導の目標とする学術論文テキスト,院生の論文テキストの,計6タイプのテキストの文体を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
<A>対面方式,非対面方式でのピア・レスポンス2形態,<B>>留学生,日本人学生,留学生と日本人学生混在の3タイプのメンバー,といった<A>「活動形態」と<B>「学習者タイプ」の組み合わせで,3年間授業実践を記録しながら,ピア活動内での学生の「指摘」と「同意」行動の出現パタンを調べていくのが,本科研での主な研究実践であるが,以下の(1)(2)の2点が,初年度に決定しきれていないため,分析,ならびに,(3)が遅れてきている。 (1)ピア・レスポンス活動内容の統一:24年度開始当初,ピア・レスポンス活動のネットワークを介して行っていた月一度の意見交換で,前期の授業実践の経過報告時に,ピア・レスポンス活動の定義等を確認しなおす必要性が考えられた。そこで,前期の実践活動の理念と形態におけるコンセンサスをとってから,条件を検討することにした。24年後期は,共通理解の上で実践授業を行って記録を取ることができているが,前期の分の分析対象が少なくなったため,当初の予定では,前期から収集する予定としていた実践活動の分析が,後手にまわっている。 (2)ピア・レスポンス活動時の学生の意識変化コードからの分析観点の選択:ピア・レスポンス体験学生に見られる意識の変化の記録採取とその方法については,24年8月の夏期報告会にて,検討し,学習活動の内容,時期,ピア間の関係などについて,評価との関係も含めて,分析の際の条件となる観点をピックアップしながら,後期分の授業分析を進めてはいるが,その分析の中から,どの観点を統計的指標として利用するかについては,まだ十分な検討が進んでいない。 (3)24年度の実践報告書:24年度末の25年2月9日に行った本科研の研究分担者間年度末報告会での報告内容や,そこで議論や,意見を交換した点を加味したものを,記録としてまとめる予定であるが,その報告書の作成が未完了となっている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の実践,授業分析,それらへの考察を,25年上半期中には報告書にまとめる。 ついで,25年度の実践,分析として,24年度の成果に25年前期分の分析を加えて,国内外の日本語教育関連の学会,研究会で報告し,他の研究者からコメントをもらうことで,研究の動向を修正していく(夏期:カナダ日本語教育振興会,秋季:日本語教育研究会 等の発表が決定している)。 また,本来の主研究活動として, 昨年度に実施したピア・レスポンス活動導入の授業実践を踏まえ,デザインしたコースを実行し,クラスの種類別に実施結果をデータ化していく。 これと同時に,その他の考察に関する取り組みとして,次の2点を検討している。① 協働学習(ピアとの活動全般を含む学習)における教師の取り組みについて考察するため,協同教育実践研究会所属の研究者らと意見交換を行うこと,ならびに,② 非対面の学生が利用する学習マネージメントシステムを用いて,疑似クラスを設置し,研究者間で模擬授業等を行って,そのあり方について検討していくことである。 その一方で, 授業分析の統計的手法についての試みを報告するため,夏期と冬期の2回実施予定の統計数理研究所の言語統計に関する共同研究の場を借りる。これは,言語統計の手法について研究している,北海道,名古屋,大阪,神戸,九州の5チーム合同の報告会であるが,ここで発表して,各チームの有識者から意見をもらう。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に,旅費,人件費,その他を予定しているが,可能であれば,備品に関する研究費を使用する予定である。 (1)旅費:25年度は,24年度と25年度の実践報告や意見交換のために,研究会,学会への参加,出張を予定している。現在,研究発表が決まっているものは,小出記念日本語教育研究会(東京三鷹ICU),カナダ日本語教育振興会CAJLE2013年次大会(トロント大学),日本語教育学会関西地区研究集会(京都外国語大学),統計数理研究所の夏期と年度末の共同研究発表会(西南学院大学,立川統計数理研究所)の4会である。それぞれ,研究分担者,代表者,研究協力者が参加する。研究協力者の出張費用は,代表者と研究分担者で負担する。 (2)レンタルサーバ:非対面ピア・レスポンス活動と,研究者間での模擬授業勉強会や意見交換のために,学習マネージメントシステムを利用しているが,運営管理を含めた外部サーバ上のシステムをレンタルしている。これを今年度も継続して借用する予定である。 (3)人件費:授業実践の会話分析のために録音音声の文字起こしと,学生の作文等電子データ化に,アルバイトや業者への発注を予定している。 (4)備品費:実践記録のために,ICレコーダーとビデオ,また,研究会での予稿集や発表資料の管理のために,タブレット型端末を検討している。
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