本年度は,これまで収集したデータの分析をまとめ,全国英語教育学会で研究発表を行った。その後,さらに分析を進め,分析項目などを見直した。 本研究は,遠隔性というタスクの特徴が,英語学習者の言語切り替えに与える影響を調査するものある。先行研究により,遠隔性という特徴をもつタスクも言語を複雑にすることが知られている。本研究は,遠隔性を持つタスクも,手続きに関わる層で言語切り替えを増加させるという仮説を検証する。 大学2年生20名にペアを組ませ,遠隔性を持つタスクとそうでないタスクを与え,録音する。その後,録音されたものからトランスクリプトを作成。次に,AS-unitに区分し,タスクをする上で必須な層と手続き的処理に関わる層に分類し,さらに,それぞれの層で言語切り替えがどのくらい行われたのかを第1言語の割合で算出。 結果は,タスクに必須の層では,言語切り替えがほとんど見られなかった。また,言語切り替えが多いとされる手続きに関わる層においても,その割合が1%から2%と低いという結果となった。よって,層間においては,手続きに関わる層の方が言語切り替えがわずかに増えているが,遠隔性という点では有意な違いが生じていないという結果となった。この理由については,学習者の個人差が大きな影響を与えているものと考えられる。それで,学習者を言語切り替えを多用するもの(スイッチャー)とそうでないもの(ノンスイッチャー)に区分し,その会話を質的に考察した。 会話を詳細に分析すると,スイッチャーは,repair,self-questioning,次にするべきことを確認する(metatask sequencing)時に,言語切り替えに頼る。相互作用能力が低く,会話を構成するのに言語切り替えという方略に頼る必要性がある。一方,ノンスイッチャーでは,その能力が高くその必要性が低くなっていることがわかった。
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