研究課題/領域番号 |
24520601
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小嶋 英夫 弘前大学, 教育学部, 教授 (30310981)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 英語教員養成 / 専門職能 / 自律的成長 / 省察的ポートフォリオ |
研究実績の概要 |
本研究3年目に当たる平成26年度は、これまで蓄積してきた実践・研究の発展的拡張を意識しながら、学内及び県内における教師教育に新たな方向性を見出す実践・研究のみならず、全国・国際レベルの学会参加を通して調査・研究を進展させ、本研究全体を一段と充実させるように努めた。本研究にも影響を与える国の重要な政策として、文部科学省から「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(2013)が発表され、新たな英語教育の在り方実現のための体制整備が、平成26年度から強力に推進されてきている。小学校高学年での英語の教科化を含む小学校英語教育の拡充強化に伴い、小・中・高を通じた系統的な英語教育改革を効果的に実現するためには、英語教員養成教育、現職英語教員研修の見直しと充実を明確に図る必要がある。このような我国の英語教育を取り巻く新しい情勢を見据え、年間を通じて教師教育の対象となる英語教員志望生、現職英語教員の意識改革を促すことを積極的に心がけた。英語教員志望生の専門職能と自律的成長を育む省察的ポートフォリオの開発も、対象者の専門的成長がお互いに認識され、年を重ねた実践の中で活用効果が着実に見えてきている。より確かな情報に基づきより大きな視野から研究に取り組むために、これまで以上に全国的・国際的な学会で研究成果の発表と参加者間の討議を行ったことにより、本研究の今日的意義の確認と新たな可能性の探求を導くことができた。複数の書籍刊行を通して、本研究の成果の一端が国内外の関係者に紹介されたことも特筆すべきことである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教師教育改革は、日本を含めた世界各国の重要課題である。本研究の目的に則り、自らの教師教育に関する視座を固めるために、国際的な動向を踏まえて最新の教員養成教育、現職教員教育の現状と新たな方向性に関する情報を得ることに努めた。学内では、独自に開発した省察的ポートフォリオの活用に加え、所属の大学英語教育学会教育問題研究会から提供された『言語教師のポートフォリオ』を併用した。前者は日常的な実習場面に応じて個人あるいは協働で省察するために、後者は一定期間にわたる専門的な学びと実践活動を総括的に省察するために活用した。これらの活用効果については、全国的にはいまだ模索の状態と認識されるが、本研究においては棲み分けを意識してその効果を確認できた。また、昨年度はContent and Language Integrated Learning(CLIL)的アプローチを現職英語教員との協働で開発し、高校の英語授業で実践し、アクションリサーチ的に研究したが、本年度は、教育のグローバル化を反映して注目される国際バカロレアディプロマプログラムの研究も院生と協働で行った。これを学部の英語科教育の授業でも紹介し、英語教員志望生の時代感覚を目覚めさせ、意識の昂揚を図ることができた。学会活動については、フィンランドの教師教育者Riita Jaatinen氏(タンペレ大学)の招待講演開催、大学英語教育学会東北支部大会及び国際大会でのシンポジウム開催、JALT国際大会で所属研究会主催のフォーラム参加、日本教育大学協会研究集会及び教師教育学会における研究発表、オーストラリアでの世界応用言語学会における研究発表と調査研究等を精力的に行い、研究論文としても実を結ぶことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究者は、平成27年4月1日付けで、これまでの弘前大学教育学部から文教大学教育学部に所属変更となった。後者は教員養成教育で長年にわたり実績を上げてきた私立大学として知られているが、英語専修を新たに立ち上げるために、本研究者はその設立に貢献することを期待されている。弘前大学には非常勤として引き続き勤務するので、本研究を継続し最終年度として成果をまとめあげることを計画している。文教大学では、より多くの教員志望生に1年次から接することができ、実習指導にも関わることができる。小学校教員志望生を対象とする「外国語活動研究」を受け持つことにもなっており、大学での教員養成教育において、小学校英語教育をどのようにして推進できるか、また小・中・高を通じた系統的な英語教育をどのようにして展開できるかについても、実践の場を通して研究することが可能と考える。さらに、越谷市教育委員会と連携を図り、現職英語教員との協働研究を進めることも視野に入れている。本研究のテーマからすれば、このような学びと実践の新たなコミュニティにおいて、これまでの経験を生かし、様々な視点から省察的ポートフォリオの可能性を理論的・実践的に探求する必要がある。最終年度であることを踏まえ、国内外の学会に参加し本研究成果の発表と論文作成に励み、より充実した研究成果を結実させるつもりである。
|