研究実績の概要 |
本研究では、第二言語(L2)の習得促進に有効とされている学習者間の言語使用に関するやりとり(Language related episodes: LREs)、いわゆる「協調的対話」の産出にモデリングが及ぼす効果を調査した。分析には大学(3科目)の4回の授業(週1回、連続4週で疑問形を明示的に指導してコミュニケーション活動を行ったクラス)の対話録音のトランスクリプトを使用した。また、授業でのLREs産出がL2発達課程に及ぼす効果を精査するため、指導前後のテストでの発話を分析して指導の長期的効果を各学習者の疑問形習得の発達段階の変化いう観点から実証した報告者の実践研究データ(Moriyama, 1997)も活用した。各授業のモデリングには日本人2人が用意されたスクリプトに従って英文再構築を演じているビデオを使用し、2クラスは全授業でLRE-rich Modelling (パートナーの誤りに気づいた人が誤り部分をリピートして気づきや修正対話を促す場面を含んだもの)を、1クラスはTraditional Modelling(同様の誤りが起きた場面で誤った本人が援助なしに自己修正するもの)を視聴した。 分析の結果、視聴モデリングの種類にかかわらず、LREが生起した言語使用については誤った発話が正しい言語形式に修正されることが多く、本傾向はペアの発達ステージの組み合わせに関わりなく見られたことから、教室でのペアワークにおける協調的対話の産出の重要性が確認できた。一方、LRE産出数はLRE-rich版を視聴したグループがTraditional版を視聴した方より多く、授業回数が進むにつれてその差が増大していることから、協調的対話の実例を含んだモデリングを継続使用する重要性が示唆された。 本研究成果は国内外の複数の国際学会で発表し、L2発達促進につながる英語教育についての具体的提言を行った。
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