本科研費最終年度となる平成26年度は2度の大きな国際学会での発表とその準備にともなうデータ分析が実績の大部分をしめる。その過程で本研究の最終的な論文執筆および出版の媒体について量的研究部分を担当した研究協力者と共に検討をはじめる段階に達した。 本年度の国際学会発表の第一はオーストラリアブリズベンで開催されたAILA(Association Internationale de Linguisitque Appliquee)国際大会におけるポスター発表である。この発表では本研究の質的研究部分のうちグループ1(女性の典型的英語使用者)のナラティブ分析を発表した。3人の女性参加者の生活世界では、高い英語力は経済資本に返還されるのに複雑なプロセスをたどり、実際のコミュニケーションに使われることによって資本としての価値が直接的に現れることがほとんどないことが明らかになった。 国際学会発表の第二は本研究が研究開始当初から目標としていたAAAL(American Association for Applied Linguistics)年次大会(於トロント)での発表である。応用言語学の分野で国際的影響力の大きい本学会にて、量的部分を担当した研究協力者寺沢拓敬博士とともに口頭発表で研究の全体像を紹介することができた。本研究は社会言語学のカテゴリーで採択された。発表では統計を用いた大規模無作為データの分析によって明らかになった日本人英語使用の実態と、そのプロファイルに合致した日本人英語使用者を長期複数回のインタビューをすることにより探求した「当事者からみた生活世界での英語使用の実態」の分析について報告した。日本人の英語使用者は自己申告で全体の10%程度で、使用目的に男女差が大きく、英語が個人にとって資本として利くためには、社会経済階層、親の資本、居住地域、学歴など他の資本のセット(capital kit)がそろっていることが必要であるという分析を報告した。
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