研究概要 |
本研究は中間言語の発達の全体像を記述することを目的とする。また同時にその成果が、語学教育の応用研究へとその成果が展開される可能性がある研究手法を確立することを目標としている。初年度は、7つの異なる習熟度グループに属する1200名以上の日本人英語学習者(初級・中級・上級)の話し言葉からから構成される大規模コーパス(NICTJLE)を分析対象とし、50項目以上にわたる多種多様な言語項目(語彙・品詞・統語構造・談話構造など)の使用頻度の情報をもとに、多変量解析(対応分析とクラスター分析)を用いて、発達の指標となる言語項目を特定した。さらに話し言葉だけではなく、同様の手法を用いて、東アジアにおける英語学習者の作文コーパス(ICNALE)を分析した。 結果、日本人英語学習者の話し言葉と書き言葉に関するさまざまな特性を明らかになった。まず、(a)WH questions, (b)synthetic negation, (c)phrasal coordinationの使用頻度は、初級者の英語学習者が最も多いだけではなく、習熟度が上がるにつれ上昇したのち下降するという緩いU字型のカーブを描くことが分かった。さらに 、(a)downtoners, (b)independent clause coordination, (c)predictive modalsなどは中級レベルの英語学習者と結びつきが強いことが明らかになった。そして(a)analytic negation, (b)hedges, (c)emphatics, (d) demonstrative pronouns, (e)indefinite pronounsは上級者および英語母語話者と結びつきが強い。また特に英語母語話者は、(a)pronoun it, (b) pro-verb doを多用していることが明らかになった。
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