研究課題/領域番号 |
24520633
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
玉井 健 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (20259641)
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研究分担者 |
イエン ナカムラ 岡山大学, その他部局等, 教授 (90320027)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 外国語教育 / 外国語教師養成 / リフレクティブ・プラクティス / 談話分析 / 会話分析 |
研究概要 |
24年度の研究成果について 本研究は、教師の発達プロセスにおけるリフレクティブ・プラクティス(記述と内省から導かれる理解を自身の授業分析の中心に位置づけるアクション・リサーチの一形式)の効果を、談話分析・会話分析という二つの社会言語学的分析法を用いて実証的に検証するものである。 研究は実践と分析の二面にからなる。教師の自律的成長を促す実践を行い、それをベースにジャーナルに対して談話分析(玉井)、教師へのインタビューデータに対して会話分析(中村)を行い、ティーチャー・ビリーフ(教育観)にどのような変容が起こるか、特にawareness(気づき)に至る過程に焦点を当てて分析する。 研究実践について:本年は実践のための授業セッティング作り(玉井)から始めた。まずジャーナルライティングという個別的な営みを共同体の中で展開させるために、ファイル共有ソフトを使って一つのジャーナル・ファイルに10人程度の参加者が共有しつつ書くという<場>を作り、4月から7月末までジャーナル実践を行った。研究者(玉井)は、フレームワークとしてリフレクティブ・プラクティスを用いて大学院授業の場で実践を行いつつ、メンターとして実践に関わった。「ジャーナルライティングの教室」と銘打たれたテキストデータは実践終了時点で100ページに及んだ。成果は国内の学会で口頭発表された。 ナカムラは上記実践の参加者数名に対してインタビューを行い会話データを録った。研究面では、会話分析研究に継続的に参加する中でデータ分析の理解を深めており、同時に会話分析研究の成果を内外の3つの学会、研究会で発表し、ワーキングペーパーにまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の目標は大きくリフレクティブ・プラクティス枠組みによる教師教育実践とジャーナル・データ採取、理論面のまとめである。 実践は24年4月から7月にかけて行われ、現役教員である大学院生11人の参加が得られた。ウェブ上で週一回のジャーナル・テキストがアップされ、研究者(玉井)は、メンターとして全員にフィードバックを返し、参加者はそれぞれ任意の二人のジャーナルにフィードバックを返す形で半対話的なテキスト共有環境のもとで行われた。大学100ページを超えるジャーナルデータが採取された。インタビューは現在継続的に行っている。 リフレクティブ・プラクティス理論面のまとめについては、現在資料を収集した文献資料をまだ読んでいる最中で、現時点ではまだできていない。これは資料の収集範囲を広げたことが原因であるが、資料読解作業は25年4月までとし、25年前半期に大方の理論的まとめを行う予定にしている。 実践とデータ収集という初年度の大きな課題は達成されており、おおむね順調に推移していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
25年度前半は24年度に引き続き、リフレクティブ。プラクティス枠組みによる教師教育実践、データ採取を行い、後半期に分析を行う予定である。分析では、今までの研究データをテキストデータとして書きおこし、精読の後に分析を行う。玉井のテキストデータの分析方法としてはマイクロ・エスノグラフィを用いるGrounded Theory Approachによる分析とSystemic Functional Approach による分析の2方法を考えている。ナカムラは会話分析によるインタビューデータの分析を行う計画である。 本研究では、書記データと会話データの二種類の分析を行って、教師が「気づき」という一つの教師認知における理解に至るプロセスを客観的に記述する。この分析過程で何らかのパターンあるいはその組み合わせが浮かび上がれば、そこから「気づき」にかかわる新しい理解と知見が得られることが期待される。 本年は26年度に計画する成果発表のシンポジウムの準備の年でもあり、場所、日程、招待研究者等を選考してゆきたい。本シンポジウムは、内省を教師教育の中心として位置付けた教師教育についてのユニークな発信の場にしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は玉井、中村ともに35万円ずつを計上し、データを書き起こす費用としてそれぞれ2万円を充てる以外は、内外の学会への参加費用にあてる計画である。研究成果は順次、国内外の学会を通して発表してゆきたいと考えている。
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