研究課題/領域番号 |
24520637
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
馬本 勉 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (40213483)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 英語教育史 / 訳読 / 独案内 / 直訳 / 講義 |
研究概要 |
英語圏の国から輸入され,明治初中期の日本で英語教科書として用いられた書物には,「直訳」や「独案内」と呼ばれる独習書が数多く存在した。「直訳」は英文の和訳を記した,いわゆる訳本である。「独案内」とは,英文中の各単語に発音カナ表記・訳語・訳順を示す番号を併記した参考書であり,各単語に付された訳語を番号順に並べ変えると,和訳の文ができあがるというものである。 平成24年度は,ナショナル読本,ウェブスター綴字書,ウィルソン読本,パーレー万国史の独習書を取り上げ,それらの出版傾向や記述内容を整理し,分析に着手した。これまでに明らかになった点は次の通りである。 1) ウィルソン読本とウェブスター綴字書は明治18年,ナショナル読本とパーレー万国史は明治20年の出版点数が最も多い。2) ウェブスター綴字書は「独案内」,パーレー万国史は「直訳」が最も多い。読本ではナショナル,ウィルソンとも,最初の3巻(ナショナルは第1~3巻,ウィルソンはプライマー~第2巻)は「独案内」,それ以降は「直訳」が最も多い。3) 独習書にはこのほか,発音のカナ表記を記した「音読」「かなつき」と呼ばれるものや,「字書」と呼ばれる単語集もある。4) 書名に同じ「直訳」が用いられていても,訳文中に原語の発音が振り仮名のように添えられているなど,独習書ごとに様々な工夫が凝らされている。5) 明治30年度以降,ナショナル読本に「講義」と呼ばれる独習書が現れる。「講義」はまとまったパッセージ毎に訳文を与え,英文中の語句に解説を施した参考書である。英文の各単語に訳順番号を付す「独案内方式」や「直訳風」の訳文が姿を消し,「講義」へ変わっていく様子から,訳読法の変遷を見て取ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,独習書を収集し,書誌データベースを作成するとともに,記述内容の分析を行った。国立国会図書館近代デジタルライブラリーをはじめとする電子情報の利用,古書収集,所蔵図書館での調査などを進めた結果,資料収集は現在のところ,順調に進んでいる。また,対象資料の増加とともに,分析の視点もより明確になってきているので,達成度はおおむね順調と言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに蓄積した書誌データベースの情報をより利用しやすい書式にまとめるとともに,新規収集資料の情報を加え,データベースの一層の充実を図る。その上で,記述内容に基づく類型化によって独習書の全体像を明らかにするとともに,細部にわたる分析を進める。特に発音・訳語・語法の記述から見た語彙学習の変遷と,訳す順の表記から見た訳読法の変遷について,分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に引き続き,独習書の収集を行う。平成24年度は,電子アーカイブ等の利用を中心にデータ収集を行ったが,平成25年度は,版の相違による内容の異なりにも目を向けるため,実物の収集を積極的に行う(1,200千円)。そのほか,図書館等での資料収集と学会における成果発表のための旅費(400千円),データ入力のための人件費(400千円),印刷費(60千円),その他消耗品の購入(47千円)に,研究費を使用する予定である。
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