研究課題/領域番号 |
24520637
|
研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
馬本 勉 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (40213483)
|
キーワード | 英語教育史 / 英語独習書 / 舶来教科書 / 訳読 / 独案内 / 直訳 / 講義 |
研究概要 |
明治期に使用された舶来英語教科書(翻刻版を含む)の独習書を収集・分析し,その変遷を考察した。約600点の独習書を対象としたデータベースを作成し,「直訳」「独案内」「講義」という各書の類型と発行年の関係から,訳読変遷史の枠組みを描くことを試みた。成果は,全体像に関わる点と個別事例の点から,次のようにまとめることができる。 【1】書誌データに画像をリンクさせた「独習書年表」を作成した。対象とした独習書の元の教科書には,(a)文典(ピネオ,カッケンボス,スウィントン),(b)万国史(パーレー,スウィントン),(c)綴字(ウェブスター),(d)読本(ウィルソン,ユニオン,ナショナル,ロングマン,スウィントン)が含まれる。それらの独習書について,(1)発行年,(2)著者・訳者,(3)書名,(4)版,(5)発行者,(6)元の教科書名・巻,(7)独習書の類型,といった書誌データと,ウェブ上の画像へのリンクを組み合わせたものが「独習書年表」である。時系列に並べることで,分析対象のうち,明治18年から22年までの5年間に出版された点数が全体の半数を超えることが明らかになった。 【2】この時期に発行された「直訳」と「独案内」の記述を細かく見ると,漢文でいう再読文字に相当する語の訳し方に変化が見られた。例えば,関係代名詞を「其の,所の」のように二度にわたって訳す場合と,そうでない場合がある。『パーレー万国史』の独習書では,この「再読」に当たる例が年代とともに減少していることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,全国学会での口頭発表2件を行うとともに,論文1点が発行された。具体的には,(1)データベースを構成する独習書点数の増加にともない,全体像の把握が進んだ点,(2)訳読法を特徴づける「再読語」の扱いという記載内容に踏み込んだ分析に着手した点,以上の2点を理由として挙げることができる。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き独習書の収集と分析を行い,データベースの拡充を図る。その分析を通じて訳読変遷史に結びつく全体像の解明を目指すとともに,具体的な表現をめぐる訳読法の変化について考察を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品費,旅費,人件費・謝金において,それぞれ当初予定を下回っているため,次年度使用額が生じているが,これは対象となる独習書の点数を抑え,分析方針を練ることに時間を費やしたことによる。 最終年度にあたる平成26年度においては,これまでよりもペースを上げ,対象を大幅に広げた分析が可能となるよう研究を進める。そのため,(1)分析対象を1,000点に増やすべく独習書の収集を続けるための物品費,(2)実物の収集とともに各地の図書館等での調査を進めるための旅費,(3)収集した独習書のデータ整理に必要な人件費,(4)成果発表のための旅費,(5)公表資料作成のための機器および消耗品のための物品費,以上を使用する計画である。
|