研究課題/領域番号 |
24520638
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
林 ひょん情 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (30412290)
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研究分担者 |
玉岡 賀津雄 名古屋大学, その他の研究科, 教授 (70227263)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本語と韓国語の第二言語学習者の呼称使用ストラテジーに対する母語話者の容認性判断を検証するとともに、容認性判断の評定に対して、評定者個人の性格特性がどのように影響しているかを明らかにすることである。 本年度は、まず、日本に在住する韓国人留学生と主に日本で韓国語を学習している日本人学生を対象に、日本語学習者と韓国語学習者の呼称使用ストラテジーの使用実態を把握するための調査を行った。具体的には、親疎関係・上下関係・性別の組み合わせの異なる32種類の対人関係を想定し、それぞれの相手(日本人学生、韓国人留学生)に対してどのような呼称語を用いるのかについての質問紙調査を行った。そして、代表者のこれまでの研究成果から得られた母語話者同士のデータと合わせながら、韓国人留学生と日本人学生同士の呼称使用に、母語規範の転移や目標言語規範の逸脱、目標言語規範の過剰使用などの現象が見られるかどうかについて検討した。また、日本語学習者作文コーパス(JCコーパス)と韓国語作文コーパス(KCコーパス)の作文に見られる呼称語使用についても合わせて参照した。 その結果、韓国人留学生の場合、親疎関係や学年の上下に関係なく、自分より年下の日本人学生に対しては、比較的待遇レベルが低い呼称を用いる傾向が見られた。一方、日本人学生の場合、相手が自分より学年が下であっても、年上の韓国人留学生を呼ぶ場合は、名前よりも韓国語の兄・姉を意味する親族名称を多用する傾向が見られた。韓国語では年齢の上下が言葉の使い分けに強く影響し、年上に対しては名前ではなく、役職名や親族名称で呼びかけるのが一般的である。つまり、本調査の結果は、異文化接触場面の呼称使用における母語規範の転移(韓国人留学生)、目標言語規範の過剰使用(日本人韓国語学習者)を示唆しており、大変興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本に在住する韓国人留学生と主に日本で韓国語を学習している日本人学生を対象に実施した調査では、韓国人留学生と日本人学生同士の呼称使用に見られる、母語規範の転移や目標言語規範の逸脱、目標言語規範の過剰使用などが確認でき、次の調査につなげるための有意義な結果を見出すことができた。現在、韓国での調査も進行しており、今後韓国での調査結果と合わせて日本語学習者と韓国語学習者の呼称使用ストラテジーの使用実態を総合的に検討していく予定である。また、次年度に計画していた性格特性テストの項目の検討も少しずつ進んでいることから、おおむね順調に進行していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の調査結果をふまえ、学習者の呼称使用ストラテジーの容認性判断と個人性格特性の影響を測定する。そして、容認性判断から学習者の呼称使用ストラテジーを検討するとともに、次年度の個人の性格特性が容認性判断に及ぼす影響を検討するための準備を行っていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は下記の通りである。 ①呼称使用ストラテジー容認度と性格特性の影響に関する予備調査と本調査を日本と韓国でそれぞれ行う。そのための印刷費、旅費、そして調査協力者への謝金などを計上する。 ②アンケートデータの入力と整理に関わる補助者謝金を計上する。 ③学習者の呼称使用ストラテジーの容認性判断と個人性格特性の影響を測定するための準備を行う。性格特性テストを検討の結果、調査では市販の性格特性テストを用いる可能性もあることから、そのための経費を計上する。 ④関係者間で調査結果の考察と検討を行い、次の調査に備えるための旅費を計上する。
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