本研究は、日本語と韓国語の第二言語学習者の呼称ストラテジーに対する母語話者の容認性判断を検証するとともに、容認性判断の評定に対して評定者個人の性格特性がどのように影響しているかを明らかにすることを目的とする。最終年度は、昨年度までの調査を総合し、その分析結果をまとめる作業を行った。主な研究成果としては、接触場面での日本語と韓国語の学習者による呼称使用ストラテジーにおける母語規範の転移や目標言語規範の逸脱、目標言語規範の過剰使用についての適切性判断では、日本人も韓国人も全体的に母語規範のなかで判断していることが明らかになった。また、容認性判断に個人の性格特性がどのように影響を及ぼしているいるかについては、感情を扱う個人の能力を示す情動知能(Emotional Intellingence:EI)のうち、自己情動評価(Self-emotion Appraisal)と情動の利用(Use of Emotion)が比較的影響していることが分かった。しかし、全体的に決定係数の値があまり高くなく、EIで測定される呼称使用の容認性判断について十分に説明されたとは言いがたい。そのため、今後多様な変数を検討する必要がある。 今後は、すでにまとめてある研究成果について、学会誌に研究論文(査読付研究論文)として投稿する。さらに、新しい分析方法の可能性を検討するとともに、分析結果をより多面的に考察することを通して、接触場面での呼称使用の特徴をより明らかにしていきたいと考えている。
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