研究課題/領域番号 |
24520640
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道工業大学 |
研究代表者 |
工藤 雅之 北海道工業大学, 未来デザイン学部, 准教授 (10321374)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 外国語 / e-ラーニング / 第二言語教育 |
研究概要 |
本研究は、我が国の高等教育機関での学力低下問題やコンピュータを利用した言語学習の問題を協働の概念を通じて解決を試みる。欧米の事例や先進的な言語教育では社会構成主義的な手法を以て問題解決に至っている事に鑑み、我が国の外国語教育の実践に社会構成主義学習の視座を与え「ドリル学習の協働的学習方法」の効果を検証し、外国語学習モデルの提案を目的とする。 本年度の研究内容は、実験環境を整えるための予備実験を北海道工業大学で行い、次年度に計画している協働学習環境の付与に問題が発生しないよう、現状の理解と協働学習に関する基礎研究を行うこと、そして岐阜工業高等専門学校の英語講義に参加し、学習者特性などを十分に理解することの2点であった。 1つ目の課題に関しては、恊働学習の課題遂行に重要となる教授方略について先行実証実験を行い、ストレスと認知負荷にはある程度相関があることが観測された。またワークトエグザンプルが、課題型の恊働作業では極めて有効な教授方略であることが判った。この2つの実験結果は、岐阜工業高等専門学校で行われているドリル学習をサポートする装置を制作する上で極めて重要な知見となることから、今年度の研究成果は非常に重要なものであった。 2つ目の課題に関しては、実際に岐阜工業高等専門学校に赴き、講義の実態を把握した。その際には、学生に簡易インタビューを行い、受講生たちからドリルの使い勝手や問題点、効果などについて調査を行った。また亀山教授とは、連絡を密に取り、訪問で観察できなかった事などについて質問したり、問題点についてスカイプなどを使用して会談を行った。本年度計画していたが、実行できなかった項目に質問紙などを使った実証的なデータ検証ができなかったことは残念であったが、次年度にどのような装置を開発すべきか課題は具体的になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在のところ、全体の研究目的に照らし合わせると、達成度は「若干遅れている」と言わざるを得ない。なぜならば、想定以上に基礎研究として行うべき内容が多く、時間がかかっているからである。前述のように本研究は、協働を学習過程に導入することで、現在の我が国の高等教育機関で大きな問題になっている学力低下問題に対してアプローチを試みるものである。現在まで、ドリル学習と恊働を混合する「ドリル学習の協働的学習方法」については、研究の対象とされておらず、特に外国語学習などの極めて高度な高次認知処理を必要とする学習課題に応用されることは、非常に斬新であると言える。従って、研究手法も探査的にならざるを得ず、幾重にも渡る基礎実験を繰り返し、質的な手法などを用いて学習者の個人環境などにも注意を払って研究を進める必要がある。 その研究手法として、まず恊働学習環境の理解は重要であり、特にオンライン恊働学習で、学習者がどのような問題を抱えるのか、そしてその問題をどう解決するのかは、ドリル学習の恊働的学習環境を整備、開発する上で非常に大きな情報源になることから、この分野を先行させて実行に移した。探査的な実験であったけれども、ストレスと認知負荷には相関があることやワークトエグザンプルの効果が、ストレス減少、または認知負荷の現象に影響があることが判ったのは大きな収穫であった。今後は、それ以外にも仲立ちをする変数が無いか確認し、基礎研究をできるだけ早急に終えて、本実験に入って行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度 (デザイン・開発段階):本研究は5つのフェイズに分かれており、1年目は(1)基礎実験及び(2)デザイン、そして可能な限り開発の準備を行い、2年目は学習環境の(3)開発を中心に行い、協働学習環境を実際に講義に提供し、予備実験などを通じてその効果について検証する。 亀山(2007)のドリル群は、オリジナルのインターフェイスを持ち、独自の学習マネジメントインターフェイスを学習者に提供しているが、英語認知スキル以外(特に協働学習)のコンポーネントを持たない。このことが、単方向のe-ラーニングの短所を助長し、飽きやストレスなどの問題を引き起こすと考える。亀山教授の助力を得て、このドリル群に対してオンライン協働に必要なマネジメントサービスを敷設し、オンライン環境のみ、オンラインとフェイストゥフェイスのブレンド環境を展開できるようアップデートを加え、ドリル群を学習者が個人単独で学習する場合と協働環境を用いて複数人で学習する場合を比較し、ドリル課題の1)学習効果、2)学習 動機、3)転移能力、4)オンライン協働でのストレス、5)言語タスクの自己効力、の5点の変化について観察する。 先行研究の知見から、社会構成主義教育理論に基づいた協働作業を学習過程に導入する方略は、動機づけ、タスク遂行能力の乏しい学習者に寄与することが分かっているので、認知的にも情意的にも強い参加を促し、協働作業により、効果的な学習になることが期待できる。その際には、文法ドリル群を行う際に、wikiなどの協働学習環境をドリル群のフォーマットに付随させ、個々の問題がなぜ回答に導かれたのか、どんな解決手法を利用しているか、学習者間で振り返りや協働を行い意見交換することが、より質の高い解決案の創出に貢献することが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の予算執行に関しては、昨年度末に予定されていた協働学習環境を敷設するための準備と基礎研究を行う為に予算を使用する。具体的には、国際基督教大学にてオンライン協働の専門家である鄭教授や敷設予定の岐阜工業高等専門学校の亀山太一教授との研究打ち合わせを行うための旅費と協働学習環境の敷設依頼を予定している業者に対してのソフトウエア制作支払いを予定している。また開発環境に不足が出た場合、機器の買い足しなども予定している。
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