第二言語および外国語の指導アプローチとして、特にヨーロッパで1990年代から注目を集めているCLIL(Content and Language Integrated Learning/内容言語統合学習)を日本の英語学習環境で実践し、CLIL活動が文法・語彙習得にどのような効果をもたらすか、及び日本人英語学習者の英語学習動機に対してどのような影響を及ぼすか検証した。 平成24年度はCLILおよび文法指導に関する文献研究を行い、実証的な効果検証実験の研究計画を立てた。平成25年度には福島原発事故の影響を強く受けた若者のメッセージを日本人英語学習者が英訳し、海外に伝えることを内容としたCLIL活動を実践し、その効果を調査した。事前事後テストの結果から、本CLIL活動は語彙・文法習得を促すことが明らかになった。さらに、動機に関する質問紙調査からは日本人英語学習者の英語学習動機(国際的活動への姿勢、英語学習必要性の認識、内発的動機)をCLIL活動が高めることが明らかになった。 平成26年度には、CLIL活動として日本と韓国の異文化間交流を実施し、その効果を検証した。日韓の大学生同士がスカイプを通して英語による交流を行うことによって、英語学習者の英語学習動機が大きく変わることを質的研究を主にして明らかにした。この調査から、CLILが単に言語能力の伸長だけではなく、学習者の技能、知識、姿勢に対しても影響を与えることがわかった。 原発事故に関わるメッセージの英訳活動および日韓の和解を目指した異文化間交流という重要なトピックを「内容」(content)としてCLILを実施した場合、その活動に必須となる語彙・文法に対する学習者の「関わり」(involvement)が深くなり、語彙・文法習得が促されること、および学習者の英語学習に対する内発的動機(特に関連性)を高めることを確認することができた。
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